BBM障がい者雇用 TAMATEBAKO ~障がい者雇用の未来をそだてるために~

2023.01.31 BBMの取り組み(支援・体制),認証・表彰

BOX8 指導員・業務リーダーの育成について

文責:人事総務部 原田 昌尚、森脇 由夏



 コロナ感染拡大の影響や物価の高騰など厳しい経済状況の中、企業における障がい者雇用は、「コンプライアンス(法定雇用率達成)、CSR(企業の社会的責任)」のためだけでなく、「事業成長のための人材活用」、「企業の価値向上」のための雇用に変化しています。つまり、障がい者が戦力となり、事業成長に貢献する雇用が求められていることになります。

 この求められる姿を実現するためには、「業務」と人の特性のマッチング、障がい者が働きやすい職場環境などが必要ですが、障がい者を支援しながら業務遂行をしていく役割をもつ「指導員」の存在が重要であり、彼らの成長が障がい者の定着や戦力化につながると考えています。

 BBMにおいては指導員、業務リーダーを各部門に配置しており、指導員の知識やスキルアップの研修体制、やりがいアップにつながるしくみ作りなどに取り組んでいます。

 そして、2022年9月にこれまで積み上げてきた取り組みである「指導員・業務リーダー育成のしくみ」が日本HRチャレンジ大賞イノベーション賞を受賞しました。

 今回はこの内容についてご紹介していきます。





 この取り組みについて、審査委員長の学習院大学今野浩一郎名誉教授からは以下のようなコメントをいただきました。

 「企業にとって重要な課題である障がい者雇用において、従来、障がい者の仕事や職場適応などに目を向けていたが、実は障がい者を支援したりマネジメントする人材が重要であり、重要だと思ってもなかなか手を付けにくいところに着目し、支援者の育成に取り組んだことが革新的である。」




(1)指導員・業務リーダーの位置づけ


■指導員・業務リーダーとは


 BBMでは、各部門において、障がいのある社員をサポートしながら業務を遂行していく現場のリーダーである指導員・業務リーダーを配置しています。

 主な役割は以下の通りです。

 ・業務の品質を維持しながら納期に合わせて業務を遂行する。

 ・障がいのある社員の特性を見ながら支援し、戦力化、定着支援を行う。

 もともと指導員が上記の2つの役割を担っていましたが、近年は指導員の得意な領域に合わせて役割の軽重をつけており、業務の専門性や経験値が高く、主に業務指導を担っている指導員を業務リーダーと呼んでいます。



 しかし、指導員も業務リーダーも業務と障がい者支援の両方の知識やスキルが必要です。その要件をもった人材や経験者が少ないこともあり、指導員の確保には苦労しています。また、現在働いている指導員も業務を覚えることに加え、障がい者の支援にも経験が必要であり、負荷がかかっている現実があります。特にコロナウィルス感染拡大の時には、障がい者の感染予防を配慮しながら現場を支えたのは指導員であり、大きな負担をかけることになってしまいました。

 このような状況の中で、今後障がい者雇用をさらに拡大していくためには、この現場のキーパーソンである指導員の重要性は高まっており、指導員の負担を軽減するとともに、彼らが元気になり、やりがいを持って働けるようになる仕組みが必要だと考えました。




(2)指導員・業務リーダー育成のしくみ



 BBMでは、これまでも指導員・業務リーダー向けのスキルアップ研修や指導員の情報共有、勉強会であるジョブアシスト会の定期的実施、臨床心理士面談などに取り組んできましたが、さらにスキルマップ(指導員のスキル一覧)の運用や業務スキル研修の実施などを追加して「指導員・業務リーダー育成システム」として整理し・運用の流れを明確にしました。

 その概要をご紹介します。


■基本となる方針、概要

・指導員・業務リーダーが常にスキルアップでき、その力を現場で発揮してやりがいをもって仕事ができるしくみを作る。

・個人の状況把握から研修、情報共有の機会の提供、上司とのコミュニケーションなどを含めたトータルの育成システムとする。

・そのコンテンツについては環境変化を踏まえ、常に現場に役に立つタイムリーなものにアップデートしていく。






■個人の状況に合わせたPDCAの運用

 全員に同じ研修メニューを受けてもらうのではなく、上司とのコミュニケーションの中で個人のスキルの状況や職場のニーズに合わせた育成計画を作り、その人に合った目標設定とどんな研修に参加していくか等を決めていきます。そして、チャレンジシート面談で研修受講後の状況確認や振り返りを行い、次年度の計画につなげていくというPDCAをまわすことになります。

 2021年から運用している「スキルマップ」は指導員として必要な要件の一覧になっており、個人の強み、弱みを把握する材料として活用しています。

※チャレンジシート面談・・・社員一人ひとりの年間目標設定シート(チャレンジシート)をもとに目標設定面談、年2回振り返りの面談を行っています。




■研修や成長の機会の提供

 すぐに現場の役に立つ実践的な研修や個人のスキルアップにつながる研修のバリエーションを増やしていくことで、一人ひとりの状況にマッチし、確実な成長につながるしくみにしたいと考えています。

 指導員の研修についてはこれまでも積極的に取り組んできました。入社時の障がい基礎理解研修から始まり、新任指導員研修、アンガーマネジメント研修などのバリエーションも少しずつ増やしてきました。





 

 さらに2020年からは中堅指導員以上を対象とした理念研修(TAMATEBAKOセミナー)、2021年からは事業部と共同で企画した「業務設計力向上研修」など、より実践的で即役に立つ研修も実施しています。

 また、指導員には生産性向上やIT運用、マーケティングなどのビジネススキルも必要であることから、ベネッセコーポレーションが運営しているUdemy研修も選択できるようにしています。多くのビジネススキルのラインナップがあるe-learning教材なので、好きな時間に学ぶことができます。





■協力し合い、高め合うしくみの構築

 スキルや知識の向上に加え、過去の成功事例や失敗事例の共有、指導員同士のディスカッションなどを行うことでスキルの底上げ、より実践的なノウハウを積み上げることができ、一人ひとりの経験不足を補うことも可能です。BBMでは、定期的に「ジョブアシスト会」を実施し、情報の共有や事例研究、指導員同士のグループディスカッションなどを行っています。

 また、指導員が日々の業務の中で、指示のしかたや指導方法などに迷ったときに相談できる臨床心理士の面談も受けられるようにしています。






■これまでの成果と今後に向けて

 このしくみを運用し始めてまだ時が経ってはいませんが、いくらかの成果と課題が見えてきました。その状況を踏まえながら、今後に向けてもっと進化させていきたいと考えています。

 スキルマップを使った面談をすることで、役割や求められていることが明確になったという声も出てきており、ある部門では、スキルマップを部門でカスタマイズして作成し、より現場に即したスキルマップとして活用し始めています。

 また、実践的な研修に対する評価は高く、業務設計研修を受講した後、「すぐに業務フローを作成した」といった声もあり、業務の効率化にもつながっているようです。

 オンライン研修も自分の興味に合わせて受講できることもあり、多くの社員が活用しています。これまでよりも自ら学ぶ流れができてきていると言えます。




 ただし、「研修の機会は増えたけれど、受講する時間がなかなかとれない」という声も多数出てきています。コロナの影響での業績低下や業務変更による忙しさはまだまだ解消できていないことも見えてきました。また、仕事が忙しいからか、社内での上司との対話や指導員同士のコミュニケーションが不足していることも感じています。もっと現場の状況をしっかり把握し、意見も聞きながら、「学ぶ環境」を作っていくことも重要だと考えています。

 これまでの状況を踏まえ、今後もより役に立つコンテンツやバリエーションの強化、学ぶ環境の整備を進め、指導員のスキルアップ、そしてやりがいをもって仕事ができるようにしていきたいと考えています。そしてそれが障がい者雇用の拡大にもつながっていくと考えています。