マテリアリティ活動事例
公開日:2020年08月31日
介護の未来を変える「サービスナビゲーションシステム」
日本は国民の4人に1人が高齢者であり、その割合は今後も増加の一途をたどっています。高齢化が進めば、当然要介護者も増えていきます。一方で、内閣府の調査によれば、2030年までに日本の労働力人口は約790万人減ってしまう可能性があることが予測されています(出典:厚生労働省 「雇用を取り巻く環境と諸課題について」)。少子高齢化により、介護ニーズが上昇するのに反して、労働力が減少する今、一人ひとりの介護スタッフの"気付き"と"行動"が大変重要になっています。
介護の仕事は、専門的な知識や技能を必要とします。そして、介護スタッフや看護スタッフ、ケアマネジャー、機能訓練指導員などがチームを組んで、ご入居者様お一人おひとりが、その方らしい生活を送れるようサービスをつくり出していく仕事です。ベネッセスタイルケアでは、生産性を高めるだけでなく、スタッフの"気付き"と"行動"によって、ご入居者様のQOL向上を実現し、介護サービスの質を高めることを目的に、介護・看護記録プラットフォーム「サービスナビゲーションシステム」(以下、「サーナビ」)を自社開発しました。
ホームの介護・看護スタッフは、ケアの後、提供したサービスの内容やご入居者様の様子を細やかに記録しなければなりません。従来、こうした情報は紙の資料で管理されていたため、記録や確認、共有には多くの時間がかかり、スタッフの負荷となっていましたが、サーナビの導入によって、パソコンやスマートフォンなどの複数のデバイスから一つのシステムにアクセスして簡単に情報の記録や確認・共有ができるようになりました。また、お一人おひとりのご入居者様に提供すべきケアがタイムテーブル上にアイコンで表示されているため、実施したケアの内容を簡単に入力でき、ご入居者様へのサービス提供が一目で分かるようになっています。これによってホームには欠かせないスタッフ間の引き継ぎや情報共有がよりスムーズになり、ケアにかけられる時間を増やすことができました。
しかし、サーナビが目指すのは、こうした生産性の向上だけではありません。
サーナビの導入によってスタッフが記録する情報の量は大幅に増えました。それらの情報は、各スタッフが「どのようなサービスを提供すべきか」を考え、質の高いサービスへと導く(=ナビゲーションする)ことにつながっています。とくに、ご入居者様お一人おひとりのご要望によって異なる「生活プラン」の実施・管理の徹底のために設けられた記録画面は、ご入居者様の反応や様子の変化などを細かく記録でき、それらの詳細な情報からスタッフの「気付き」を促すような設計になっています。このサーナビからの情報を踏まえてサービスを実施することで、ご入居者様のQOL(生活の質)向上を実現していきます。これこそが、サーナビが介護現場にもたらす真の価値なのです。
「介護はクリエイティブな仕事」というのが、ベネッセスタイルケアの考え方です。蓄積された記録から「気付き」を得て、今後提供していくべきサービスについて考え、スタッフ間で議論を交わしながら、サービスの質を向上させていく。現場におけるこうした取り組みに、スタッフがやりがいや面白さを感じ、介護の仕事に携わり続けることが、介護業界をより活性化していくことにつながるのではないかと考えています。サーナビは今日も、クリエイティブな介護サービスをサポートし、介護現場の未来を少しずつ、でも着実に変えています。
※サービスナビゲーションシステムは、公益社団法人企業情報化協会が主催する「平成30年度IT賞」において、介護業界の未来を変化させる可能性のあるシステムとの評価を受け、「ITビジネス賞」を受賞しました。
VOICE
ベネッセスタイルケア サービス推進本部
祝田 健
介護現場の最重要課題、それは人手不足ではなく人財育成であると思っています。
サーナビを、ご入居者様のQOL(生活の質)を高める人財の育成につながるシステムへ、介護の未来を創るプラットフォームへと深化させていきます。