「反抗期」に備えて始める オトナの「アンガーマネジメント」

お子さまの言葉や態度に、イラッとしがちな反抗期。「売り言葉に買い言葉で後悔...」などということにならないよう、気持ちをうまくコントロールしていきたいですよね。そこでおすすめしたいのが「アンガーマネジメント」。自分の怒りと上手に向き合うテクニックです。 お子さまの反抗期に備えて、さっそく取り入れてみませんか?

【お話】
戸田 久実(とだ くみ)先生
一般社団法人 日本アンガーマネジメント協会理事。コミュニケーションの指導をテーマとした、大手民間企業や官公庁などでの研修や講演には定評がある。「アンガーマネジメント」(日経文庫)など著書多数。

まずは知っておきたい、反抗期のこと

反抗期のサイン

大人を見る目が厳しくなる
おうちのかたから自立しようと、大人を一人の人間として見始めるため、大人の欠点や落ち度を指摘するようになることも。
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やつあたりする
精神的に不安定な状態に加えて、心身ともに急激に変化する時期。その不安からイライラして、物や家族にあたることも。
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テリトリー意識が芽生える
テリトリー意識が芽生えるため、自分の物や場所に対して敏感になり、自分の領域にふれる、入るなどされると怒りだすことも。
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友達を否定されると怒る
同じ成長過程にある友達には仲間意識を感じます。そのため、友達の否定=自分の否定と感じて怒ることも。
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 こんな言動に出られたら、大人だってイラッとしたり、悲しくなったりして、対応にとまどうこともありますよね。でも、これらはすべて順調に成長している証です。
 反抗期は、自立に向かう第一歩です。「自分はこうしたい」という意思が強まる一方で、身体の成長と共にホルモンのバランスが崩れる時期でもあり、お子さまの心はとても不安定な状態にあります。その揺れ動く心が上のようなサインとなって現れているのです。子供たちは、反抗したり、悩んだり、ときには甘えたりといった言動をくり返しながら、一人前の大人としての「自分」を確立していきます。反抗も、自立には欠かせない大切な過程なのです。
 おうちのかたもとまどうことの多い時期ですが、このような心身の変化にいちばんとまどっているのは当の子供自身です。そのことを頭において、反抗的な態度にはどっしりとかまえ、甘えてきたときには温かく迎えるなどして、自立を後押ししていけるとよいですね。

「アンガーマネジメント」って、なに?

 「アンガーマネジメント」は、自分の怒りと上手につきあうための心理トレーニングです。「反抗的な言動についイラッと...」などというのはよくあること。「喜怒哀楽」というように、「怒り」も「喜び」や「哀しみ」と同じく、人間にとって自然な感情です。罪悪感を覚えたり、無理に抑え込むことはありません。とはいえ、怒りに任せて反抗期の子供を叱ったのでは、お互いしこりが残るだけ。怒りに任せず、でも、伝えるべきことはきちんと伝えていくことが大切です。そこで、「怒ること」と「怒らなくていいこと」の線引きをして怒りをコントロールするコツを知り、適切に怒ろうというのが「アンガーマネジメント」です。 さっそくそれを実践するときのポイントをご紹介していきます。

「アンガーマネジメント」の4つのポイント

1.怒りに任せて行動しない

 反抗的な態度に「怒り」で応じるのは、火に油を注ぐようなもの。怒りを感じても、6秒待てば理性が働くと言われています。相手の言動の真意を考えるなどして、一呼吸おくことが大切です。それでもどうしても「頭に血がのぼった!」ときには、以下の方法も試してみてください。
・怒りを数値化する
怒りのレベルを1~10の数値で考えてみましょう。数値化すると怒りを客観的にとらえることができ、「今のは3だから怒るほどでもないな」などと思えたりします。
・その場を離れる
いったんその場を離れて感情をリセットしてみましょう。相手の顔が見えないところに移動することで怒りをおさめやすくなります。

2.「怒り」の境界線をはっきりさせる

 「怒り」の元となる、「~すべき」の境界線をしっかり決めておきましょう。境界線がコロコロ変わると周りはとまどいます。例えば「同じ注意を3回言わせたときには怒ります」などと決め、できれば周りの人にも伝えておきましょう。

3.自分の「~すべき」が当たり前だと思わない

 帰宅した子供が荷物を投げ出して、TVを見ているようなとき。大人は「荷物を先に整理するべき」と考えがちですが、子供としては「まずは休んで集中力を取り戻すべき」と考えているのかもしれません。子供とはいえ、「~すべき」の基準は人それぞれです。自分の「~すべき」をおしつけないよう注意を。

4.伝えたいことを言葉にする

 売り言葉に買い言葉で相手を責めてはしこりが残ります。「私は乱暴な言葉を使ってほしくないと思っているの」など、自分がどうしてほしかったのか、なぜ怒っているのかということを相手にきちんと伝えましょう。

 最初はなかなかうまく「アンガーマネジメント」ができないかもしれませんが、くり返すことで習慣になっていきます。自分の「怒り」との正しいつきあい方を知り、適切に「怒る」ことで、お子さまの反抗期と上手に向き合っていけるとよいですね。
 また、反抗期にありがちなケース別に「アンガーマネジメント」で対応する具体的な方法を「『アンガーマネジメント』で行う反抗期コミュニケーション術」でご紹介しています。合わせてご覧ください。

イラスト/今井 久恵