習い事や学校の宿題、家庭学習などで忙しいとき、「あれをやらなくちゃ」「これ、できていない...」と親子でイライラしてしまうこともあるのではないでしょうか。限られた時間の中で有効なのは、やることに優先順位をつけて絞り込むメリハリ学習。高学年以降で必要になってくる効率的な学習法をご紹介します。
【お話】
鳥原 隆志(とりはら たかし)さん
(株)インバスケット研究所代表。ビジネスや教育の現場で、制限時間内に効率よく物事を処理していくための能⼒を育成する思考法「インバスケット」研究の⽇本における第⼀⼈者。そのための教育ツールの研究・開発、講演活動などに幅広く取り組んでいる。「やらないことを決めなさい」(マガジンハウス)など著書多数。
忙しいときこそ優先順位づけが大事。そのわけは?
「アレも、コレも 」と忙しさを感じる原因のひとつは、やることを頭の中だけで考えているから。実際にやることの量が把握できていないのに、得体の知れない不安を感じて「とにかくやることがたくさんある」と気持ちばかりが焦ってしまうのです。
もうひとつは、「全部やらないと」と考えているから。やることの中には、重要なものとそれほどでもないもの、その日にやるべきものと明日以降でもよいものなどさまざま。その整理ができていないと、「カンペキに」「どれも全力で」と思い込み、かえって全てが中途半端になってしまうこともあります。
そのようなときは、一度立ち止まり、今いちばん⼤切なことは何か、何に全⼒で取り組むべきなのかを⾒極めることが大切です。メリハリをつけて行動することで、限られた時間の中でもやるべきことを効率的にこなしていくことができます。
自分に今、何が大切なのかを考え、メリハリをつけて行動する力は、中学以降に欠かせない「計画的に学ぶ力」のベースになります。さらに、より重要なのは、この力によって「自分がやりたいことをする時間を生み出せる」ということ。これは将来、自分の夢をかなえるための大きな支えになります。メリハリをつけ優先順位を考える積み重ねが、将来に向けたトレーニングになるのです。 では、どうすればやることの優先順位づけができるのか、その方法をご紹介します。
やるべきことの優先順位づけ、その方法は?
STEP1
まずは「やること」を全部書き出す
忙しいときこそ一度立ち止まり、やることを整理。「算数のドリル2ページ」など、勉強の「やること」をできるだけ具体的に書き出しましょう。1週間単位で、付せんに書くのがおすすめです。「やること」が目に見えるようになって全体量がわかるだけでも、気持ちは楽になるものです。 書き出した内容をお子さまと一緒に確認することで、「意外に少ない」「多いから減らしたほうがいい」などと、気づくきっかけにもなります。また、「必ずやるべきこと」「すぐにやらなくてもよいこと」などを整理することができます。
STEP2
やることを曜日に割り振る
書き出したやることを、曜日ごとに割り振りましょう。最初に、習い事などの曜日が決まっていることから割り振り、それ以外のやることを、偏らないよう調整しながら割り振っていきましょう。
STEP3
「今⽇の最優先」を3つ選ぶ
1日の付せんの中から、「今日の最優先」を3つ選びましょう。選ぶポイントは、宿題のように「その日にやるべきもの」、もしくはお子さまが「がんばりたいもの」。お子さまの「がんばりたい」を優先することで、やる気も上がります。
STEP4
付せんをカレンダーに貼る
選んだ付せんをカレンダーに貼り、取り組んだら、お子さまが自分で付せんをはがすようにしましょう。はがすことで、達成感を得られると共に、おうちのかたにも取り組み具合がひと目でわかります。時々確認し、うまく進んでいたらほめてください。
◆応用編◆
「今日の最優先」をもとに「学習計画表」をつくる
メリハリ学習の応用として、「学習計画表」を作成してみましょう。「自分が自由にできる時間」が「見える化」できます。計画表では「やること」に目がいきがちですが、大事なのは、空いた時間は「自分が自由に使える時間」ということを意識させることです。また、「ごほうびタイム」を目に見える形にすることもコツ。勉強を始める前やがんばった後に「うれしい」と思える時間をおくことで、やる気が高まります。
最初はうまくいかなくても、付せんを使った⼯夫で楽しく取り組んでいるうちに、だんだん「今⽇の最優先」を⾒極める⼒が⾝につきます。おうちのかたは、お⼦さまが⾃ら決めて取り組み、その結果「やるべきことができた︕」というスッキリした気持ちを味わうことができるようサポートしていきましょう。この気持ちが、限られた時間の中でも上⼿に計画を⽴て、効率的に物事に取り組む意欲へとつながっていきます。
「5年生のメリハリ学習 こんなときどうする?&わが家の工夫」で、具体的な事例とアドバイスをご紹介しています。あわせてご一読ください。
イラスト/すぎやまえみこ
※この記事は、2022年5月に制作しています。新型コロナウイルスによる影響が続く場合、ご提案している内容が不適切となる場合もあります。その際は、個人のご事情等に合わせて、適宜、ご活用いただきますようお願いいたします。