本業とプロボノ、ボランティアの活動の好循環
ベネッセコーポレーションで留学生向け事業を担当する室雅子は、ホームビジットの活動を行うNPO法人NAGOMI VISITの理事や、探究学習の普及活動を実施する一般社団法人こたえのない学校での「Foxプロジェクト」への参加など、本業の他に様々な活動をしています。
Foxプロジェクトはインクルーシブな社会を目指すための交流の取り組みや情報発信を行うプロジェクトです。室は、高校時代に海外の介護施設を見学して日本との違いに驚いたこと、大学で学んだ心理学から福祉に興味があったこと、そして社会人になって体験した多文化共生の活動からつながる、今自身が向き合うべきテーマと感じているそうです。
「本業以外のいわゆるプロボノとしての活動を始めたばかりの頃はペースがよくわからなくて失敗し、睡眠時間をだいぶ削ることになりました。
でも今は、平日は本業や家庭のこと、土日の夜はプロボノなどと、うまく切り分けることができています。一緒に活動する仲間たちには同じくらいの子どもがいる人も多く、Slackなどのやりとりで効率をよくしているので、活動時間はそんなに多くありません。
時間の問題より、本業とNPOでの活動を両方行っていることのメリットが圧倒的に大きいです。本業で得たスキルで活動をし、活動で得た刺激や課題意識が、本業へのモチベーションや課題解決につながることを実感しています。」
室がこれまで関わった社会課題解決の活動についてご紹介します。
始まりはホームビジット=ボランティアとして外国のお客さまを家庭に受け入れたことから
「母校がキリスト教系であったこともあり、奉仕や架け橋の活動はいつか自分もという気持ちが強かったです。なので前職の取引先で親しくなった方がホームビジットのプログラムを始めたのをきっかけに、面白そう!とすぐにホストを始めました。プロボノとも言えないかもです。」
ホームビジットはホームステイと異なり、プラットホームでマッチングした海外からの旅行者が一般の日本人の家庭に行き、夕ごはんやランチなどおよそ2、3時間を家庭で過ごし、料理を通じてローカルな体験をするアクティビティです。
室はこれまで世界約30エリア、70人以上のゲストを受け入れてきました。
ホームビジットの魅力。さらなる活動も
「文化が異なる相手とお互いに尊重し認め合う関係性を作れる『グローバルな市民として暮らす日本社会の実現』という団体のねらいに深く賛同しています。
海外に行ったとき、『家庭の中を覗いてみたい!普段はどんな食事をしているの?』と興味のある人はたくさんいると思います。その気持ちは海外から日本にくる方も同じです。ホームビジットの受け入れの時間は単純にとても楽しく、次のゲストはどんな料理を出そうとレシピ本を読んで研究したり、最新スポットの情報などを収集する時間は、自分のためにもなります!」と室は明るく話します。
フィンランドからのゲストと共に、夕食の後は茶道体験も
コロナ禍のためここ数年は受け入れをストップしましたが、この間に室は登録団体のホスト以外の業務を手伝うようになりました。
NAGOMI VISITが、受け入れ時のシュミレーションができるe-learningのプログラムやワークブック、ホストが次の受け入れを楽しみできるためのカードゲームを制作することになり、教育の会社に勤務している室に声がかかったのです。
「ベネッセに勤めてから身につけた、制作のノウハウを活かすことができました。業務でお世話になったデザイナーさんにご依頼したり、本業で得た経験やスキルがとても役立ちました。
自分ができることがあればと理事もさせていただくことになりました。」
コロナ禍での活動は難しく、受け入れはストップしていましたが、この間に室は登録団体のNPO法人NAGOMI VISITのホスト以外の業務を手伝うことになりました。
初めてホストをする人のための受け入れ時のシュミレーションができるe-learningのプログラムやワークブック、ホストが次の受け入れを楽しみできるためのカードゲームを制作することになり、教育の会社に勤務している室に声が掛かったのです。
「ベネッセに努めてから制作のノウハウを身につけることができました。業務でお世話になったデザイナーさんにご依頼したりと本業で得た経験やスキルがとても役立ちました。自分が役に立てることがあればと理事もさせていただくことになりました。」
NAGOMI VISITで一緒に活動する楠めぐみさんに、室についてうかがいました。
「"一人一人が学び、成長していくコミュニティ"という部分がホームビジットの受け入れの活動に加えてもうひとつ大きな軸になっていくといいなあ、そんな組織にしていきたいなと感じていた時に、コアメンバーとして参画してジョインしてほしいと思い、お誘いさせていただきました。本業のご経験を活かして活動いただき、本当にありがたいです。」
本格的な活動は、産休時の閉塞感から
室がNAGOMI VISITでホスト以外の活動を迷いなく引き受けられたのは、他の団体でプロボノの実績があったからです。
「実は、第一子の産休中にプロボノを始めました。会社に行かず家にいることに、とても閉塞感を感じていました。ホームビジットの受け入れはしていましたが、仕事をしていない自分は何者でもない感じがして、もう少し社会とつながりたかったのです。
初めてプロボノという言葉を知ったときは単純にかっこいい!思い、とても興味を持ち、フェイスブックなどで気になる団体のフォローをしたりしました。その頃はプロボノになれる自信はありませんでした。
ですがベネッセに入って身につけたスキルが活かせそうな活動の募集があったこと、そこに切迫感が加わり(笑)、えいや!と団体に問い合わせをしました。」
これをきっかけに、女性起業家を支援するネットワークであるアジア女性社会事業家ネットワーク」での通訳やファンドレイズ、前述の一般社団法人こたえのない学校での活動など、プロジェクトベースで複数の団体で活動しました。
復職後は時短勤務ということもあってプロボノ活動を会社に言い出せませんでしたが、その後上司の知ることとなり「学んだことを仕事に活かす循環があり、外に目を向けようというメンバーの刺激になるので、もっと発信してください!」と言われて安心したそうです。
興味があるから続けられる
「そんなに構えずに、自分が興味のあることにアンテナをはって、団体をゆるく遠巻きに見ていると、何かができるかもしれないと思えるのです!
自分の知識やスキルが、世の中をよくすることにつながったら嬉しくありませんか?」
と話を終え、軽やかに次の会議に向かいました。
- 室 雅子
- 大学時代は心理学専攻。旅行会社勤務を経て、日本を観光以外でも強くしたいという思いからグローバル人材の育成に関わろうと2012年㈱ベネッセコーポレーション入社。高校事業部で留学事業の立ち上げを行い、現在は大学グローバル事業部で日本への留学事業担当。6歳、4歳の子を持ち11月に第3子を出産予定。