9月の土曜日、台風にも関わらず、40人近くの小学校6年生が集まり算数の授業が始まりました。東京都国分寺市で行われている算数教室です。この手伝いを20年以上続けているのが、ベネッセグループの㈱プランディットで算数・算数の企画編集を行う村上登美子です。
「もう20年も経ちましたか。ずっと進研ゼミチャレンジ算数の企画制作をしていましたが、産休復帰したときが確か指導要領が大きく動くタイミングでした。算数の思考力という新しい視点での教材づくりに勉強不足を感じたのです。」と話す村上は、
当時、進研ゼミの算数の思考力のページを監修をしていただいていた片桐重男先生が指導する算数教室のボランティアの話を聞いたとき、すぐに参加を決めました。
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算数のもの見方・考え方を養う特別な授業~蜜蜂の巣の数を数える~
教育委員会の事業であるこの算数教室は、学校行事で来れない土曜日を避けながら、1回1時間半程度、年間全10回開かれます。本日は、蜜蜂の巣の並び方の特徴に気づき、その巣の数の数え方に潜むきまりを見つける授業でした。
片桐先生に指導を受けた代表の先生が授業を進め、村上や十数人の現役の先生や教師を目指す学生が、机間をまわって子どもたちの様子を見ながら、一人ひとりに声掛けを行います。
正六角形の性質は図形の単元で学習しますが、それを元に数式をつくるといった内容は別単元の学習です。単元融合の学習内容は授業ではなかなか扱う時間が取れません。ですので、子どもたちも習ったことをどう組み合わせて考えればいいかを新しい体験として学びます。正六角形の性質を確認した後、実際に蜜蜂の巣を一人ひとりがノートに描き、その図形をもとにどんな数式に表せるのかを考えます。
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「子どもたちの考えはさまざまで毎年参加している私でも、へえ~と感心してしまうことがよくあります。毎年毎年学びなおしをしながら少しずつ勉強を積み重ねている感じです。」と村上。
授業が終わった後は、先生方による振り返りも行われ、どういう声掛けをしたら子どもにもっとわかりやすくなるか、自分の考えが持てるのかを議論されていました。
参加された先生に村上についてたずねると
「村上さんがいると安心します。お任せできるから。子どもたちへの対応も素晴らしいのです。」とお褒めのことばをいただきました。
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子どもたちを思う先生方との時間も自分にとって大切な時間
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「自分で考える時間をしっかりとって、自分で解けたなと思えることがいちばん大事なんだ。そのためにやっているんだ。」と片桐先生はおっしゃいます。
この片桐先生の考え方に賛同し、村上も多くの先生方と共にずっと算数教室の手伝いを続けています。「だいたい同じ内容で毎年授業が行われますが、子どもたちは最初の授業と最後の授業では全く顔つきも変わってきます。成長のスピードには毎年驚かされます。また、片桐先生の作られる教材は毎年やっていてもまだ発見がある程、深い算数・数学の考え方に裏打ちされた教材です。しかも、それがおもしろい!本当に日本の宝と言える片桐先生と一緒に算数の先生方とご一緒できる時間はとてもありがたいです。ボランティアというより特権だと思って、毎年勉強させていただいています。」と語る村上。
たくさんの子どもたちと触れ合い『今の子どもたち』を知ること、少しでも多くの子どものたちに『算数のものの見方考え方を持ってもらうこと』、また『先生方と有意義な時間を過ごしたい』そんな思いで今後も算数教室への参加を続けていくそうです。
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正六角形を意識して子どもが作った蜜蝋の巣の形 *国分寺市算数教室
算数数学的な思考力を育むことを目的に、国分寺市在住の片桐重男先生が25年以上続けられている教室。毎回1時間半、年間10回開催されている。毎年50名ほどの6年生が学習し、これまで1,000人以上の子どもたちが学んだ。。教材はすべて片桐先生オリジナルで、子どもが興味を持ちそうな身近な物を題材に、毎年、新しい問題を考案する。片桐先生の指導を受けた先生による教室が、都内の他の場所でも開催されている。*片桐重男先生
1925年生まれ。東京都立高校教諭、東京教育大学大学院修士課程を経て、東京都立教育研究所指導主事、文部省初等教育教科調査官、横浜国立大学教授、文教大学教授を歴任。新算数教育研究会名誉会長、算数数学教育合同研究会名誉会長
- 村上登美子
- 1989年㈱福武書店(現ベネッセコーポレーション)入社。進研ゼミ小学講座の算数の誌面や添削問題の企画編集、小学5年生の編集責任者などを経て、現在はベネッセグループの編集プロダクションプランディットに出向中。就学前から高校生まで、算数・数学に関する幅広い誌面の企画編集に携わる。