どう伸ばす? 5年生の「思考力」 ~「育ちドキ」のサインをキャッチ!~

「思考力・判断力・表現力」は、昨今の入試や2020年度全面実施の学習指導要領でも重要視されている大切な力です。知識や経験がぐっと増える5年生は、まさにその「育ちドキ」。お子さまのサインを上手にキャッチし、「思考力」を育んでいく方法について考えていきましょう。

【お話】
角屋 重樹(かどや しげき)先生
広島大学大学院教育学研究科教授、国立教育政策研究所教育課程研究センター基礎研究長などを歴任し、広島大学名誉教授、国立教育政策研究所名誉所員、現在、日本体育大学大学院教育学研究科長。著書に「改訂版 なぜ、理科を教えるのか」(2019年/文溪堂)、監修に「東菅小学校の7年間の物語」(2019年/文溪堂)などがある。

なぜ今、「思考力・判断力・表現力」が重要視されているの?

 AI技術の発展、ますます進むグローバル化と、社会はめまぐるしく変化しています。子供たちが大人になる頃には、変化のスピードもますます増して、社会のあり方は今とは全く異なっていることでしょう。そのような社会では、前例にならった正解などはほぼなく、初めて出合う課題や複雑な課題にも柔軟に向き合い、解決していける人材が求められます。そのために必要となるのが「思考力・判断力・表現力」。新しい課題に進んで向き合い、周囲と協力し合って課題を解決していくために欠かせない力です。

 この力を備えた人材を育むために、今、学校教育も変わろうとしています。2020年度から全面実施された新しい学習指導要領では、授業を通してどのように「思考力・判断力・表現力」を育んでいくかがより具体的に示されており、例えば、下のイラストのように、条件に合わせて手段を比較し、検討するなど、思考のプロセスを学ぶことも重視されています。

小5保護者WEB記事イラスト1.jpg

 この動きにあわせて、小学校の授業のスタイルも変化しています。下のグラフにも見られるように、先生が「教える」授業ではなく、子供たちが「自分たちで考える」授業が増え、グループで活動したり、互いに話し合って学ぶスタイルが多くなってきています。

2図版2 思考力グラフ_R.JPG

 このように、子供たちが大人になる将来の社会を見据えて、学校教育でも入試でも「思考力・判断力・表現力」が重要視されています。

5年生は、思考力の「育ちドキ」

 思考力は、知識や経験、考えるスキルの習得の積み重ねの中で深められる力です。目の前の事柄をそのままとらえて考える低学年の段階を経て、高学年では知っていることを基に比べたり、類推したり、関係づけたり、それをもとに結果を予想したり、解決方法を検討したりなど、より複雑な思考ができるようになります。生活面でも、委員会やクラブ活動などで大きな役割を担うようになるので、自分で考え、それを伝えるだけでなく、他の意見を取り入れてよりよい解決策へと導いていくための思考力がますますアップしていくことになります。  知識や経験はもちろん、考えるスキルが増す5年生は、まさに思考力の「育ちドキ」です。それは日々の言動からも推し量ることができます。例えば、次のような発言がみられたら、お子さまの思考力が「育ちドキ」であるサインです。

思考力の「育ちドキ」のサイン

サイン1. 「~みたいだね」「~と違う」

 例えば道で、お子さまが体の色が保護色に変わったカエルを見つけ「あれ? 朝見たときと色が違う。違うカエルかな?」とつぶやいたとき。このような発言は、知っていることと比較して、共通点や違いに気づいているサインです。これは、複数の物事を比較できている証拠。「似ているけれど、ここが違う」といった気づきから新たな疑問が生まれ、さらに思考を深めていくきっかけにもなります。

サイン2. 「前はこうやったから、今回も...」

 例えば、雨の日に洗濯物を室内で乾かさなくてはならなくなり、お子さまが「前、風の強い日にすぐ乾いたことがあったじゃない? 扇風機を使ってみるのはどう?」と提案したとき。このような発言は、新しい疑問や課題の解決方法について、以前の経験や知識に関連づけて予測しているサインです。頭の中では、「あのときこの方法でうまくいったから、同じようにできるのでは?」「ここが似ているから同じような結果が出るのでは?」などの思考が働いています。

サイン3. 「~ってどうなっているのかな?」

 例えば、お子さまがコップの水にストローでぶくぶくと息を吹き込んで「砂糖が水に溶けるみたいに、息は水に溶けないのかな?」と発言したとき。このような発言は、直接見えないものについて考えをめぐらせているサインです。経験や知識が増えて興味の対象が広がるのに伴い、直接確認できない事柄を知っていることから類推したり、目に見えない物事のしくみを図などに置き換えて表現できるようになっています。

 思考力がぐんぐん育っているという、「育ちドキ」のサイン。このサインを見逃さず、お子さまの思考力を伸ばしていきたいものですね。そのコツは、「どう伸ばす? 5年生の『思考力』~楽しく『思考力』を伸ばす4つのコツ~」でご紹介していきます。あわせてご覧ください。
※思考力には個人差があるので、あくまでも目安として考えましょう。

イラスト:日江井 香