安全インストラクターに聞く! 子供が犯罪に巻き込まれないために~予防編~

 子供たちの安全を守る基本となるのは、「子供がひとりにならない」ことです(詳しくは、「安全インストラクターに聞く! 登下校や外出時の子供の安全を守るには? 」をご覧ください)。とはいえ、成長するにつれて子供がひとりで行動する機会も増えますよね。そんなときに大切なのが、子供が自分で身を守るための力です。その力を引き出す関わり方を安全インストラクターの武田さんに伺いました。

【お話】
武田 信彦(たけだ のぶひこ)氏
安全インストラクター。市民目線で安全のコツを伝える「うさぎママのパトロール教室」を主宰。講演やワークショップ、ラジオ、WEBなどを通して、各世代に安全のコツ、身を守るコツ、一般市民による防犯などについて楽しく、わかりやすく伝えている。「SELF DEFENSE 『逃げるが勝ち』が身を守る」(講談社)など著書多数。

まずは「観察力」を鍛える

 子供が自分の身を守るためにいちばん大切なのは、犯罪やトラブルに巻き込まれないよう予防することです。そのために大切なのが「観察力」だと武田さんは話します。
 「『観察力』とは、自分の周りにどんな人がいるか、車やバイクは?など周囲に意識を向ける力です。『なんかヘン...』『なに?この人』など周りの異変に気づくことで、いち早くその場を離れる、逃げるなど身を守る行動をとれる可能性が高まります」。
 犯罪を起こそうとする人は人目につきたくないという意識をもっているので、振り返って見るだけでも「気づかれたかな?」と「やりづらさ」を感じます。この「やりづらさ」が犯罪行為への心理的なブレーキとなり、犯罪を未然に防ぐことにつながります。
 「『観察力』を鍛えるには、普段から周りをよく見る、よく聞くようにすることです。そのためにおすすめなのが『だるまさんがころんだ』です。子供たちにおなじみの遊びですが、前後左右そして後方にも素早くしっかり意識を向ける習慣をつけることができます」。
 例えば、曲がり角で立ち止まるとき、エレベーターに乗るとき、家の鍵を開けるときなど、防犯上の重要なポイントを選んで、「だるまさんがころんだ、どっちが早くできるかな?」と親子で楽しみながらやってみるのもおすすめです。

人と相対するときの、距離感覚を身につける

 「次に大切なのが、相手との『距離感覚』です。人と相対するとき、腕を伸ばしても触れることができない距離を感覚でつかんでおきましょう」。
 こちらもゲーム感覚で、おでかけのとき「大人の腕はどのくらいの長さかな?」などと声をかけ、歩く鬼ごっこをしてみましょう。
 「このとき気をつけたいのが『怖い人につかまっちゃうよ』と恐怖心をあおる設定をしないこと。おすすめなのは、『人とお話をするときは、このくらい離れるのがマナーだよ』と穏やかな雰囲気で伝えることです」。
 実際に大人が腕を伸ばしても手が届かない距離はおよそ1mといわれており、これはパーソナルスペースと呼ばれる快適なコミュニケーションの距離とほぼ一致しています。「知り合いでも知らない人でも、この距離を守ろうね」と伝え、マナーを守りながら安全に人と相対する姿勢を育みましょう。
 また、「体の距離と同じくらい大切なのが、心の距離をとることです。悪意ある人に心理的にコントロールされないことが重要です。ポイントは、誘いやお願い事などには『できません!』のひと言で断ること。理由をつけるとそれを逆手に言いくるめられたり、相手を警戒しているようなひと言を言ってしまうと逆上させてしまう可能性もあるからです」。
 加えて、会話の中で起こりそうなケースをあらかじめ想定して、ルールを決めておくとよいそうです。例えば低学年なら「お話に『食べ物』や『飲み物』が出てきたら注意してね。もらっていいのは、学校か家だけよ」、高学年なら「お話に『カメラ』や『写真』が出てきたら注意してね。知らない人に写真を撮らせてはだめよ」と、これを言われたら「できません!」と言うための要注意ワードを決めておきましょう。また、子供たちも知っている「いかのおすし(*)」の「いか」と「の」に絡めて「遠くでも近くでも、『どこかに行く』『その場から動く』ようなことは全部ダメ」と伝えておくのもよいですね。
 知らない人に限らず、顔見知りの人とあいさつなどを交わしているときも、要注意ワードや「どこかに行く」という話が出た場合には、必ず「できません!」のひと言で断るよう、伝えておきましょう。
*警視庁が考案した防犯標語で、「いか ない、らない、おきな声をだす、ぐ逃げる、らせる」の頭文字をとったもの。

 犯罪やトラブルに巻き込まれない「予防」として、「観察力」や「距離感覚」は大きな力を発揮します。それを自然に発揮できるよう、普段からくり返し練習し、習慣にしておくことをおすすめします。

「安全インストラクターに聞く! 子供が犯罪に巻き込まれないために~『逃げる』編~」もあわせてご覧ください。