低学年から高学年、友達関係どう変わる?

低学年から高学年へと成長していく中で、小学生の友達関係は少しずつ変化していきます。それにつれ、トラブルや悩み事の内容もまた、変わることもある様子。そんな子供たちの友達関係に、おうちのかたはどのように関わっていけばよいのでしょうか。気になる疑問に、元・小学校養護教諭の宍戸先生がお答えします。

【お話】
宍戸 洲美(ししど すみ)先生
帝京大学生活学科学科長・教授。長年、小学校で養護教諭を務め現職に。子育て支援活動も手がける。著書に「養護教諭の役割と教育実践」(学事出版)などがある。

Q 低学年と高学年では、子供の友達関係が変わってくると聞きます。どのように変わるのですか?
A 友達を選ぶ基準が変わります。低学年は「近く」の子と、高学年は「気の合う」子と友達になりやすい傾向があります。
 低学年の友達選びは「一緒に遊べるかどうか」が基本。「家が近い」「席が隣」など物理的に近くにいる友達を選ぶ傾向があります。また、親どうしが仲良しだと子供も仲良しという場合が多く、おうちのかたからも友達関係が見えやすい時期です。
 9歳頃から高学年にかけては、自分や他人を客観的に見る力が育ち始めるため、「おしゃべりがおもしろいから」「サッカーが上手だから」など情緒的、能力的な要因で「気の合う」友達を選ぶようになります。自立心も芽生え、親よりも友達を大事にする傾向が強まるので、おうちのかたから友達関係が見えにくくなることもあるようです。

Q 子供の友達関係について、家庭ではどのような関わり方をしていけばよいのでしょうか? 
A 低学年では、関係づくりの基本となる善悪の判断やマナーをしっかり伝えて。高学年では、トラブルが起こったときにも子供自身が考えて対処していく力を育むことを心がけていきましょう。
【低学年】
 低学年は、おうちのかたがまだ友達関係を把握しやすい時期。だからこそ、善悪の判断やマナーなどをしっかりと伝えておきたいものです。これがその後の人間関係の基本を形作ります。お子さまの話から気づいたことやありがちなことなど、ケースに合わせて伝えていくのがよいでしょう。
例えば...
〇低学年では、「ゲームソフトを返してくれない」「貸したおもちゃを壊された」など物にまつわるトラブルが起こりがちです。「親の目の届かないところで物の貸し借りをしない」とあらかじめルールを決めておくなどして、どうすればよいのかを具体的に教えましょう。
〇「人の家の冷蔵庫を勝手に開ける」など、家庭によってマナーのあり方や教え方が違うことを感じるケースもあります。そんなときには「あなたもやってはいけないし、うちではお友達もやってはいけないので、きちんと教えてあげようね」と伝え、指導のしかたを考えましょう。
〇接し方に悩む場合は、ご家庭どうしで話し合える関係が築けていれば、お互いに注意し合うのもよいですし、学校に「上手に遊べるようアドバイスしたいのでどう働きかければよいか」というスタンスで相談してみるのも手です。

【高学年】
 高学年になると自立心から親に言われたくないこと、知られたくないことが出てくるものです。根掘り葉掘り聞き出すのではなく、「何かあったらいつでも相談に乗るよ」と子供自身の解決力を信じて待つスタンスが大切です。子供が自分から話し出したら、そのときがチャンス。まずは子供の気持ちに寄り添うことを心がけ、解決策を考える手助けをしてみてください。解決そのものより、解決できる力を育むことを目標にしていきましょう。
声かけ例
○話を聞くとき
・「そうなんだ」「なるほど」「うんうん」などの相づちをひんぱんに。
・「○○と感じたのね」など子供の言葉をおうむ返しにして、共感を伝えましょう。
○解決策を考えるとき
・「あなたはどう思っているの?」「どうしたいと思っているの?」などまずは気持ちに寄り添いながら、お子さま自身の考えを引き出していきましょう。おうちのかたの体験談を話す、聞いた話を伝えるなどしてさりげなくご家庭の考えや価値観を伝え、解決策を考えるきっかけを与えるのもよいですね。
○子供が自分の考えを話し始めたとき
・まずは「すごいね! そこまでちゃんと考えているんだ」などと認める声かけで受け止めて。「話してよかった!」と感じることで親子の信頼関係も増し、子供自身が自分で解決へと向かう姿勢をサポートすることができます。

Q 特に注意しておきたい友達関係のトラブルにはどのようなものがありますか? その対処法も教えてください。
A 「おごってくれる」「新しいゲームソフトを持っている」などの功利的なつながりには要注意。高学年では、過剰な仲間意識にも配慮が必要です。
 年齢にかかわらず、「いつもお菓子をくれるから」「新しいゲームソフトを持っているから」など、功利的な理由で友達関係を築いている場合は注意が必要です。健全で対等な人間関係とはいえません。学年が上がるとお金がらみのトラブルに発展することも。金品のやりとりはどんなケースであってもしてはいけないと、低学年のうちにきちんと約束しておきましょう。
 最近の子供たちの友達づきあいは、グループが持続せず短期間に入れ替わるのが特徴です。そのため、自我が芽生えてくる高学年では、周囲を見回してどうすれば仲間外れにならないかと気を配りすぎるあまり、息苦しさを感じるような場合もあります。そんなときは、「誰だったら正直な気持ちを話せそう? 相談してみたら?」と声をかけてみましょう。学校の担任や保健室の先生に相談してみるのもよいでしょう。
 いずれの場合も以下のような様子が見られたら、トラブルやSOSのサインであることも。子供と向き合って丁寧に話をする必要があります。
【SOSのサイン】
・明らかに悩みを抱えている様子なのに、声をかけても「別に」「ふつう」など詳しく話をしたがらない/返事をしない、など
・ウソをつく
・以前と比べて、落ち着きがなくなった
・物にあたる
・以前より帰宅が遅くなった
・学校に「行きたくない」ということがある
・見かけない持ち物がある
 トラブルを防いだり上手に解決したりするための方法の一つとして、普段から積極的に学校とつながっておくことをおすすめします。相談はもちろんのこと、PTA活動に参加して親どうしの交流をもっておくのもよいでしょう。授業だけでなく給食の時間なども参観してみると、子供の普段の姿が見えやすいもの。最近の学校は保護者であればいつでも参観できるところも増えています。

わが家なりの「子育ての哲学」をもち、
成長に応じて子供の社会性を育むサポートを

 学校は子供が直面する初めての社会。友達関係は社会性を身につけるチャンスでもあります。「社会でみんなで生きていくためには、自己主張あり、我慢あり、そのバランスが欠かせません。大家族の中で、自然に人間関係のさまざまな経験を積むことができた昔に比べ、少子化・核家族化した現代では、人間関係の経験が不足しがち。価値観も多様化しているため、各家庭の考え方もさまざまで、子供の友達関係は親にとっても難しい課題になっているように感じます」と宍戸先生。
 「まずはわが家なりの『子育ての哲学』を意識してみてください。といっても、難しく考えなくても大丈夫。突き詰めると何がいちばん大切かということをもっておく、ということです。子供に何を大切にして生きてほしいのか、どんな大人に育ってほしいのか、そして、守るべきわが家のルールは何なのか。その『子育ての哲学』からブレないように子供を導いていく姿勢が基本となります。そのうえでよい友達関係を築いていけるよう、低学年のうちは寄り添い、成長の様子を見ながら徐々に、子供自身が考え解決していく力を育むサポートへと上手にシフトしていきましょう。トラブルが起きたとしても解決を急ぐのではなく、チャンスととらえて試行錯誤する中で、子供の社会性を育んでいけるとよいですね」。

 小学生は友達関係も勉強中。干渉しすぎず、手を放しすぎず、ほどよい距離で見守っていきたいものですね。