学校再開後の学習・生活、子供にとって大切なことは?

学校が再開され、1か月あまりがたちました。いつもとは違うこの夏、学習面や生活面で、どんなことを大切にして、どのように過ごすのがよいのでしょうか。教育評論家の親野智可等先生にお話を伺いました。

誰もが手探り状態。子供の気持ちを最優先に

授業の再開状況は、都道府県や市町村、また学校によっても違います。今までなかったことなので、何が正しいのかよくわからず、みんな手探り状態です。
そんな中、休校中の学習の遅れをどう取り戻すかについては、先生がたにもおうちのかたにも、気持ちの焦りがあると思います。学校では、学習内容を取捨選択したり、授業時数を増やしたりなど、試行錯誤しながら授業を進めていこうとしています。
ただ、勉強をギュウギュウに詰め込むことは、必ずしも子供のためにはなりません。それでなくても休校や自粛ですでにストレスをため込んでいる子供に必要なのは、休んだり遊んだり、ぼーっとしたりする時間です。「うちの子、無理をしているみたい」というときは、子供の気持ちを最優先に考え、宿題の量などについて先生と交渉してみることを考えてもよいかもしれません。

心のケアのキーワードは「共感的」

学校再開後の子供の様子もさまざまです。友達に会えるようになってうれしい、学校が始まって生活リズムが戻った、という子がいる一方で、登校することに不安を感じている、外に出たがらなくなり疲れやすくなった、という子もいます。
この時期、おうちのかたは、子供を少し注意深く観察して、「いつもと違う」と感じることがないか見てあげてください。「違う」と感じたら、それはストレスの兆候かもしれません。そんなときは、まず、子供の話をじっくり聞いてあげましょう。大切なのは、「共感的」に聞くこと。叱ったり、意見を言ったり、励ましたりする前に、共感して受けとめることで、子供は安心してもっと話せるようになります。たくさん話せば子供のストレスが軽減されると共に、親のほうもいろいろな情報を得て対策を考えやすくなります。

睡眠時間の確保+夏休みは「やりたいことをたくさんやる」時間に

子供がストレスを感じているときにどうするか。家庭でできることのひとつは、「基本的な生活リズムを整える」ことです。起きる・寝るといった生理的リズムを整えるのは、当たり前のようでいて大事。睡眠時間の確保は、免疫力のアップにもつながるので、コロナ対策としても有効です。
もうひとつは、本人が好きなことをたくさんやる時間を確保することです。今年は夏休みが短縮される学校も多いと思いますが、夏休みこそ、リラックスして過ごせるようにしてあげてください。「休校中」も時間はたくさんありましたが、それは、のんびりできる「休暇」とは違います。休校中からストレスをためているのですから、本人が好きなこと、熱中できることをたくさんやれる、幸せな楽しい時間をたっぷりとってあげましょう。
そういう時間は、子供の非認知能力を伸ばすうえでとても大切であり、学力向上にもつながります。また、子供のストレス耐性を高め、免疫力をアップさせる効果もあります。「よく張る弓はよく緩む」といいますが、家でしっかり緩むことが、休み明けの学校でのがんばりを支えてくれます。

子供に合った学習法を見つける

おうちのかたが感じている不安として、学習内容を十分に理解できていないのではないか、学力に差がついているのではないかなど、休校中の学習に関することが多く挙がっています。
今回の経験をふまえて、子供に合った学習法を見つけておくことは、今後、同様の状況になったときの安心につながります。例えばデジタル学習のように、理解が不十分なところは理解できるまで、基礎内容がしっかり身についているなら応用問題まで、などと、子供の力や理解度に合わせた学習が可能なものがよいと思います。

ここでおうちのかたにお伝えしておきたいのは、学力の考え方です。実は、自分がやりたいことをとことんやっているときが、最も能力が伸びるときなのです。好きなことに熱中して脳をフル回転させているとき、脳が成長することがわかっています。そういうときに勉強すると、処理速度が上がっているので、学習内容がどんどん頭に入っていきます。
子供にとって本当に大切な学力とは、やりたいことを自分で見つけてどんどん進めていく「自己実現力」です。そういう意味でも、夏休みは、好きなことや熱中できることに存分に取り組める時間をつくってあげてほしいと思います。

「本当に大切なこと」を長いスパンで考え直すよい機会

休校の間に失われたものに対する焦りやイライラ、先の見えない不安など、おうちのかたもさまざまなストレスを抱えていると思います。いつも全力疾走で、いろいろなことに追われ、常にはりつめた糸のようになっているかたもいるでしょう。
非日常が続く今は、大人が自分を見つめ直すよい機会です。がんばりすぎたり、自分を責めたりせず、少し気持ちをゆったりさせましょう。自分にとって本当に大切なことは何か、子供にどんな人生を歩んでほしいのか、そのために時間をどういうことに使うべきか。やりたいことを精選して、それほどでないものは断捨離し、本当にやりたいことに集中しましょう。自分を変えるチャンスととらえ、ご自身やお子さんのこれからのことを長いスパンで考え直してみてはどうでしょうか。

【お話】
親野智可等(おやのちから)先生
教育評論家。教師経験をもとに、子育て、しつけ、親子関係、勉強法、学力向上、家庭教育について提案。Twitter、ブログ「親力講座」、YouTube「親力チャンネル」などで発信中。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても著名。全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも大人気。