「将来やりたいことがわからない。」「自分に合う大学や学部って?」
学年が上がり、進路を考える機会が増えるほど、自分の将来を決める大切な進路について悩むお子さまも大変多くいらっしゃいます。
そんなとき「社会が抱えるリアルな課題」と「学び」との関わりを知れば、広い視野から進路を考えることができるはず。
お子さまに「社会課題とのつながり」から大学を見てみるという視点を伝えられるよう、今回は青山学院大学の先生たちに4つの事例についてお話しいただきます。
進路決定は多くの視点から自分、そして社会の物事を考えることが大切なので、進路に悩むお子さまへの声掛けのヒントとして、ぜひこの事例をご覧ください。
【事例①】他国の社会問題を通して、グローバルな視点と問題意識を養う【文学部 フランス文学科/シルヴァン・アダミ 准教授】
■先生のゼミではどのようなことに取り組んでいますか?
文学部は「人文知」を学びの核に、幅広い見識と知恵を養う学部です。
私のゼミでは、教育、経済、女性の地位、環境問題など、フランス社会のさまざまな側面を取り上げ、これらのテーマを横断的に扱います。こうした社会問題をグローバルな視点から理解することが目標です。
授業ではフランス語を使用します。言語はその国の文明の発展を反映するもので、外国語を学ぶということは、異なる考え方を学ぶことでもあり、社会の問題に対して違った角度からアプローチができるようになります。「フランス的」な論証の方法、たとえば、どのように問題を定義するのか、また秩序立てて研究を進める方法なども学びます。
■社会課題とのつながりを教えてください。
他国の社会問題を考えることは、同時に自国を別の角度から見ることでもあり、私たちのライフスタイルが地球に与えている影響を自覚することにつながります。
たとえば、2022年にフランスに打撃を与えた干ばつは、地球温暖化という問題だけでなく、経済的・社会的・政治的にも影響をおよぼし、天然資源の獲得についても問題を提起しました。また、世界で起きている食料廃棄は生産量の3分の1を占めると言われている一方、8億人以上の人々が栄養失調に苦しんでいます。
これらのテーマに取り組み、何が問題になっているかを理解することで、個人としてどのように行動できるかを考えることができます。
■読者にメッセージをお願いします!
好奇心を持ち、他者に興味を持ち、新しいことを学ぶ努力をしてください。学問、芸術、スポーツ...どんな分野でも、自身の周りにある世界の豊かさを発見してほしいです。
以前、学生がチョコレートについて発表しました。チョコレートと社会問題にどんな関係が?と思う人もいるかもしれませんが、発表では、カカオ生産地の森林破壊、児童労働、フェアトレードなど多くの問題が取り上げられました。
物事を多角的に見ることで、どんなテーマも深めることができます。社会と関わり、社会の仕組みを理解できる人になってほしいと思っています。
Check!>> 「人文知」を学びの核に、人間を見つめ、知性を磨き、教養を深める。【文学部の詳しい学びはコチラ】
【事例②】多様性を尊重し、平和的な共存を図る「多文化共生社会」を目指して【総合文化政策学部 総合文化政策学科/飯笹 佐代子 教授】
イスラム文化を学ぶために訪れた渋谷区にある日本最大のモスク「東京ジャーミイ」。礼拝堂では、女性はイスラム式にヴェールで頭髪を覆います。
■先生のゼミではどのようなことに取り組んでいますか?
文化や芸術によって社会をより豊かにする方法を学ぶのが総合文化政策学部です。
私のゼミでは、多文化の共生を考えるうえで鍵となる思想や理論とともに、国内外の多文化社会の最前線で起こっている具体的な事例に着目しながら、多文化のダイナミズム、交流・共生に向けた取り組みについて学びます。また、多文化交流を推進するうえで重要な役割を果たしているアートの活動にも注目しています。
ゼミには、国際政治、移民・難民、民族・人種・エスニシティ、文化交流、現代アートなどに関心を持つ学生が集まっています。これまでの夏合宿では「多文化の課題とSDGs」や「日本社会の多様性とマイノリティ」などをテーマに、グループに分かれて調査に基づくプレゼンテーションを行い、討論を重ねました。モスクの見学や芸術祭への参加など、多文化を体験することも重視しています。
■社会課題とのつながりを教えてください。
アート作品には「人々に社会課題への関心を喚起する力」があります。
近年、世界各地で紛争などによって国境を越えて祖国を逃れる難民が増えています。その一方で、受け入れ国の中には難民を排斥する勢力の台頭も見られます。このように人々を分断し、共生を阻む政治に対抗するために期待できるのがアートのもつ力です。
アート作品や映画を通してメッセージを発信することで、人々の難民問題への関心を喚起することができます。また、アート活動を共に行うことで相互理解を促すことができます。アートと社会、政治とのかかわりに注目しながら、より良い共生社会を目指して挑戦を続けています。
■読者にメッセージをお願いします!
多様な文化、民族、宗教、文明の平和的な共存を図ることが国際社会の共通課題として重要性を増しています。"多文化"化の進む日本社会も決して例外ではありません。
グローバル時代に求められる「教養」には、自分が体験しない遠い世界の出来事にも思いを馳せることのできる想像力と、問題解決に向けた創造力が大切です。大学での学びや活動を通じて「想像&創造」力を身につけ、多文化の共生を実践できる人を目指してください。
Check!>> 文化や芸術によって、社会をより豊かにする方法を学ぶ。【総合文化政策学部の詳しい学びはコチラ】
【事例③】未来の事業構想を考え、社会課題の解決をめざすイノベーション集団【地球社会共生学部 地球社会共生学科/松永エリック・匡史 教授】
■先生のゼミではどのようなことに取り組んでいますか?
地球社会共生学部はGlobal Issuesの解決をめざし、「メディア/空間情報」「コラボレーション」「経済・ビジネス」「ソシオロジー」といった多様な視点から「共生マインド」を養う学部です。
私のゼミでは、アーティストおよびビジネスコンサルタントとしての私の経験を体系化した思考法を使って未来の事業構想を考えます。構想には社会課題と向き合う内容を織り込み、一人ひとりが未来を創造する当事者であるというマインドセットを育てます。
また、独自のアクティブ・ラーニング・プロセスを採用。まず基本情報や感覚を得るために、社会で活躍しているエリックゼミアドバイザーを中心に講義と議論を実施。今できることでアクションをとる、という考えから企業と共同でイベントを開催します。
その後は"エリックゼミはメディアである"というポリシーに基づき、学生自身がSNSやメディアとのコラボレーションを企画することによって活発な情報発信を行います。
■社会課題とのつながりを教えてください。
さまざまな社会課題に本気で取り組むエリックゼミでは、とくにダイバーシティと環境問題に力を入れています。これは、どんな人も平等に幸せな人生100年を過ごせる社会を目指しているからです。
例えば、世界ではジェンダー平等があたり前になってきている一方、日本の女性の活躍の機会が極端に少ないことを私自身、危惧していました。私のゼミではLGBTQ+の問題を中心に、当事者も仲間として一緒に解決方法を模索しています。
また、外部イベントに参加することによって社会課題に取組む様々な人達との連携も強化しています。
■読者にメッセージをお願いします!
どんな人にも平等に幸せな未来を創造する事業構想には多様な視点が必要で、大学のゼミだけでは何も起こせません。まずは自分の価値観に向き合い、その価値観を共有する仲間とコミュニケーションをとり、高い当事者意識を持って実際に行動する姿勢を身につけてほしいと思っています。社会に貢献したいという方を仲間としてお待ちしています。
Check!>> Global Issuesの解決をめざし、「共生マインド」を養う。【地球社会共生学部の詳しい学びはコチラ】
【事例④】分断の壁を越え、共に生きるコミュニティを創る「つなぐ人」になるために【コミュニティ人間科学部 コミュニティ人間科学科/河見 誠 教授】
■先生のゼミではどのようなことに取り組んでいますか?
「地域に向き合える人間」を育てるのがコミュニティ人間科学部です。
私のゼミでは共生社会、すなわち人々が共に生きるとはどういうことかについて考えます。なぜ共生は必要なのか、それは本当に可能なのか、その実現のために必要なことは何かという、そもそも論まで掘り下げて考え、語り合います。
それを通じて、学生が自分なりの共生社会観を創りあげ、「つなぐ人」になるための土台を養うことを目的としています。
■社会課題とのつながりを教えてください。
社会において共生が求められる場面は、実際には共生が難しい状況においてです。そして、共生社会への理解は、共に生きることの難しさや、逆に共生が開く可能性を実感するときに、グッと深められていきます。
例えば、統合失調症の人たちの当事者研究、認知症の人とその家族の現状と共生ケア、ホスピスの現場などを、授業の中で共生という切り口から考え議論していきます。さらに視野をグローバル社会との共生に大きく広げ、カンボジアやバングラデシュの子どもたちを支援している国際NGOスタッフをゲストに招き、アジアの人たちを支援する目的や支援が生み出す豊かさ、「つながり」を創っていく鍵などについて直接対話する時間も持ちます。
また、学外での体験も推奨しています。ゼミ企画としては、多面的な「つながり」の形成により「適疎」を実現している北海道東川町への訪問、アジアアフリカの若者を招いて農を軸に自然と共に生きる持続可能型社会の担い手を育成している那須のアジア学院でのワークキャンプへ参加します。
コミュニティ(共に生きる社会関係)形成はコミュニケーション(対話)から始まります。壁があるところにコミュニケーションの糸口を見出し、風穴を開け、つながりを生み出す知恵と力と粘り強さ(レジリエンス)を身に付けた人は、先が見えない今の時代だからこそ、必要とされています。
■読者にメッセージをお願いします!
多種多様な人・本と出会い、考え、つなぐこと・つながることの奥深さと楽しさを味わい、発見と気づきをたくさん蓄積してほしいと思っています。
マザー・テレサは「最も悲惨な貧困は孤独であり、愛されていないという思いです」と述べています。私たちの社会や私たち自身はどうでしょうか。
つながりあい、共に生きるコミュニティを創る担い手になるため一緒に学びましょう。
Check!>> 地域を理解、体験し、「地域に向き合える人材」を育てる。【コミュニティ人間科学部の詳しい学びはコチラ】
まとめ
ここで紹介した以外にも、大学にはさまざまな課題の解決に貢献できる学びがあります。教科書から知識を学ぶだけでなく、フィールドに飛び出してリアルな社会課題と向き合い、具体的な解決策を考える学びも豊富です。
貧困や差別や環境問題のような、大きな課題だと思えるものを一人ひとりが意識することで、世界は少しずつ、けれども確実に変わっていきます。
「社会課題」と「大学での学び」との関わりを意識することで、お子さまが将来やりがいを感じる・社会で活躍する姿をイメージできるようになります。
このような進路決定の視点を保護者の皆さまからお子さまへ伝える声掛けをすることで、お子さまの進路が見えてくるかもしれません。
\抽選で100名に図書カードが当たる/
※この記事は、公開日時点の情報に基づいて制作しております。