今後、お子さま世代はさらなるグローバル社会を生き抜いていくことになるため、将来を見据えて進路選びをする時代に。このシリーズで、"海外大学で学ぶ"という選択はそれほど縁遠い世界の話ではない、ということをお伝えしてきました。
では、お子さまの可能性を広げるため、"海外大学"という選択肢を少し真剣に考えてみようと思ったとき、おそらく、多くの人が最初に引っかかる問題は「お金」のことではないでしょうか?「海外なんだから、当然、日本の大学に行くよりお金がかかるはず。とてもとてもウチには無理なのでは...?」。そんなイメージを持っていらっしゃるご家庭が、驚くほど多いのが現状です。
たしかに、海外留学には授業料や渡航費、海外での生活費など様々な費用がかかり、総額にすると安くはありません。そんなときの強い味方になるのが「奨学金」の存在です。全員がもらえるわけではなく、決して簡単とは言えない奨学金取得への道のり。ですが、返済不要の奨学金は意外にたくさんあり、多くの学生に門戸を開いています。
今回は、知っておいて損はない海外奨学金についてご紹介します。
やはり人気なのは「給付型」の奨学金。
「海外で学びたい!」という熱意が道を開くきっかけに!
海外留学をする人向けの奨学金は多くの団体によって実施されており、多種多様な制度がありますが、大きく分けると、返済義務のある「貸与型」と、返済不要の「給付型」の2種類になります。
海外の大学入学からの奨学金には貸与型が多いですが、返済不要(給付型)のものも複数用意されています。基本的に「給付型」の奨学金は優秀な人材を育成するといった意味合いが強くなりますが、やはり人気があり、競争率が高い傾向があります。支給額や応募資格、募集時期などが各制度によって異なります。
課せられる応募資格としては、語学力の証明(TOEFL®テストやIELTSといった英語テストのスコア)や、高校での学習成績が基準をクリアしていること、何かに特化した能力や技術などが挙げられます。
ただ、多くの場合、成績や能力だけでなく、重視されるのが「海外大学で何を学び、何を身につけたいのか」という学びへの強い意欲や熱意です。奨学金を申請する場合にも、それぞれ望ましい生徒像に合わせた面接が用意されています。そこでアピールできる「海外で学ぶことへの想い」がハッキリとしている人ほど、奨学金への道は開けていくといっていいでしょう。
また、奨学金獲得を目指して頑張っていくことで、お子さまのやりたいことや目標がより明確になり、海外大進学への大きなモチベーションに繋がっていくという相乗効果も期待できます。
奨学金の応募は個人単位で。
スケジュールを上手に組むのがコツ
奨学金への応募は、特に学校経由などの指定がない場合、基本的にすべて自分で行います。先述のとおり、奨学金の募集は、年間を通して様々な時期に行われています。
まずは各財団のホームページなどで自分の状況に合った奨学金の内容や、募集時期の目安をあらかじめチェックすることからスタート。指定された提出書類や資料等を用意して応募、というのが一般的な手順です。具体的なプロセスは以下になります。
1)ホームページ等で情報収集
2)応募書類を準備
:願書や高校の成績証明書、留学先大学の情報などのほかに、小論文やエッセイなどが課される場合があります。
3)オンラインもしくは郵送で応募
:オンラインで事前登録の後、書類を郵送するパターンもあります。
4)選考
:書類審査の後、面接が行われるのが一般的です。まれに筆記試験が行われることもあります。
5)支給決定
1.学校の成績証明書などが必要になることもあるので、早めに確認し、余裕を持って学校の先生に依頼!
2.複数の奨学金に応募する場合は、それぞれの締切に気をつけつつ、TOEFL®テストなどの検定対策と合わせてスケジューリング!
日本で募集している返済不要の奨学金
日本学生支援機構(JASSO) 海外留学支援制度(学部学位取得型)
文部科学省所管の独立行政法人である日本学生支援機構(JASSO)が行っている留学生支援の1つ。日本から海外の学士号が取得できる大学に、学士の学位を取得するために留学する日本人学生等に対して、日本学生支援機構が国費により学修活動に必要な経費を支援する制度です。グローバル人材の育成に必要な海外留学促進などを目的とし、給付型の奨学金が支給されます。採用人数が多めで、地方の学生の獲得実績も多数あります。
■WEBサイト■
2020年度海外留学支援制度(学部学位取得型)
https://www.jasso.go.jp/ryugaku/study_a/scholarship/gakubu/2020.html#01
<例:2021年度募集の場合> ※募集は終了しています。
実施団体名 | 独立行政法人日本学生支援機構(JASSO) |
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対象者 (主な応募資格・要件など) |
海外の大学で学士の学位を取得するために留学する日本人学生等 ※日本の大学と外国の大学との間におけるジョイント・ディグリー及びダブル・ディグリー等国際共同学位プログラムによる留学は除く <資格要件>(抜粋) ・支援期間開始前までに留学先大学の入学許可を得ることができる者 ・支援期間開始時までに日本の高等学校等を卒業もしくは修了するか、応募締切時に高等学校等を卒業もしくは修了してから3年以内 ・留学先大学での主たる使用言語が英語の場合、応募締切時から過去2年以内に受験した英語能力試験で、TOEFL iBT®テスト 80点、またはIELTS 6.0(Academic Module Overall Band Score)以上 ・高等学校等の全履修科目の評定平均値が、5段階評価で3.7以上 など |
対象国 | 学士の学位取得(芸術の実技分野を除く)が可能な大学が所在する諸外国(地域) |
金額 (支給内容の概要) |
ア.奨学金:月額5万9,000円~11万8,000円(留学先地域により異なる) イ.授業料:1万USドルまでは実費額(1万USドル相当を超える場合は各年度250万円が上限) |
支援期間 | 原則4年 ※標準修業年限を限度とする ※支援期間中の他大学への転入学は原則不可 ※「大学入学準備コース」の年数は支援期間に含まれる。ただし、留学開始時(支援期間開始時)に留学先大学の入学許可を得ていることを条件とする |
他の奨学金との併給 | 可 |
募集人数 | 未定(参考:2020年度採用人数45名) |
募集時期 | ◆事前登録期限:2020年9月1日(火)~10月13日(火)13時〔日本時間〕まで【厳守】 ◆応募書類提出締切:2020年10月1日(木)~10月15日(木)13時〔日本時間〕必着 ※2021年度の募集・選考は終了 |
※JASSOには貸与型の「第二種奨学金(海外)」の制度も用意されています。基本的に、海外の大学・大学院に進学する前に申し込む「予約採用」と進学後(在学中)に申し込む「在学採用」を行っていますが、保護者の休職・失職・破産など予期できない事由により家計が急変し、緊急に支援の必要がある場合には第二種奨学金(海外)の応急採用の支援対象となります。
柳井正財団 海外奨学金プログラム
社会課題に独自の方法でアプローチし、人々が自立して、互いに尊重し合い、豊かな生活を送ることができる社会づくりに貢献することを目指す柳井正財団が、HLAB,Inc.を活動パートナーとして運営・提供している奨学金制度。志や情熱を持った学生がグローバルな水準で高度な知見を身に付けると同時に、お互いが知的につながり才能を活かし高めあうことを支援しています。原則として、対象とされているアメリカの概ねトップ30に入る大学、および同等レベルのイギリスの大学への留学に対し、奨学金が支給されます。
※奨学金制度の変更(新制度)により、2021年9月入学者の奨学生(第5期生)募集より、2種類の奨学金制度が設置され、毎年2回の募集が行われます。また、奨学生1名あたりの年間奨学金の上限金額が増額されました。
実施団体名 | 公益財団法人柳井正財団 |
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奨学金の種類 | ◆公募制学校推薦海外大学奨学金(予約型) ◆公募制海外大学奨学金(合格型) |
対象者 (主な応募資格・要件など) |
・在学期間中を通じて日本国籍を有していること ・国内の他の給付型奨学金を受給していないこと(国内外の返済義務のある奨学金、海外の給付型奨学金、奨学金に該当しない使途の支援金等〈研究助成金、起業資金、行政による一時交付金等〉との併給は可) 【公募制海外大学奨学金(合格型)の場合】 ・高等学校及び中等教育学校に在学中で、2021年2月から 2021年6月末までに卒業見込みであること ・本奨学金プログラムの対象大学に入学できる学力、資質等を備え、原則20歳以下で、2020年9月以降に高校を卒業し、2021年9月または秋の入学を目指していること ・本奨学金プログラムへの出願時点で、語学試験として原則 TOEFL®テスト または IELTS等、及び、学力試験として原則 SAT、ACT または IB 等のスコアを保持していること ※スコアを保持していない場合も応募可能 ・応募した学生の世帯構成員による家計支持者の所得が 2019年度と2020年度の2年間において、家計支持者の所得が2,400万円以下 など |
対象国 | アメリカ・イギリス |
対象大学 | アメリカの概ねトップ30に入る大学、および同等レベルのイギリスの大学 ※アメリカ33大学(University 18大学、Liberal arts College 15大学)および、イギリス4大学となります。〔対象大学一覧あり〕 【アメリカ・イギリス共通】 ・対象以外の大学(アメリカ国内またはイギリス国内の大学に限る)に進学する場合は、対象大学と教育水準が同程度と財団が判断した場合のみ奨学金支給の対象となる(認めるか否かの結果は最終面接後に通知) 【イギリスのみ】 ・大学進学準備コースは対象外 |
金額 (支給内容の概要) |
【アメリカ】 年間上限 95,000USドル *就学のために大学から請求される授業料、寮費、保険料(年間上限 80,000USドル)と学習・研究・生活支援金(年間15,000USドル)を別途支給 【イギリス】 年間上限 65,000ポンド *就学のために大学から請求される授業料、寮費、保険料(年間上限 54,000ポンド)と学習・研究・生活支援金(年間11,000ポンド)を別途支給 |
支給期間 | 【アメリカ】大学卒業までの通算4年間 【イギリス】大学卒業までの通算3年間 |
他の奨学金との併給 | 給付型奨学金の場合は不可 |
募集人数 | ◆公募制学校推薦海外大学奨学金(予約型):米国・英国合わせて年間20名程度 ◆公募制海外大学奨学金(合格型):米国・英国合わせて年間20名程度 |
募集時期の目安 | ◆公募制学校推薦海外大学奨学金(予約型):毎年7月上旬から8月末頃まで ◆公募制海外大学奨学金(合格型):毎年12月末頃から翌年の2月上旬頃まで ※2021年9月/秋入学の場合、応募受付は2020年12月18日(金)~2021年2月14日(日)23:59 <終了しています> |
公益財団法人グルー・バンクロフト基金
ともに駐日大使であったジョゼフ・グルー氏、エドガー・バンクロフト氏などの意志をもとに生まれた日米の相互理解、人的交流の支援などを目的とした公益財団法人により運営されている基金。毎年、日本の高校卒業生に対し、アメリカの一流リベラルアーツカレッジへの進学を支援する奨学金が支給されています。90年以上におよぶ歴史と実績を持ち、返済不要の奨学金の支給だけでなく、200名以上の卒業生との交流を通じて、後輩に対する情報提供や各種支援も行われています。
<例:2021年夏出発の奨学生募集の場合> ※募集は終了しています。
実施団体名 | 公益財団法人グルー・バンクロフト基金 |
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対象者 (主な応募資格・要件など) |
・日本国籍を有していること ・高等学校3年在学中で2021 年 6 月までに卒業見込み、または応募時に高等学校を卒業してから1年以内であること(高卒認定試験合格者を含む) ・家庭の所得金額が2,000万円以下であること(保護者同伴面接時に課税証明書を提出) など |
対象国 | アメリカ |
金額 (支給内容の概要) |
1)米国のリベラルアーツ・カレッジに進学する者に対し、毎年5万USドルを4年間支給。基金より志望校2校に推薦状を送付(リサーチ大学は対象外) 2)米国の4年制大学(リサーチ大学などリベラルアーツ・カレッジ以外への進学も可)に進学する者に対し、毎年5万USドルを4年間支給。基金より志望校2校に推薦状を送付 3)DePauw Universityを第一志望校とする者を大学からの授業料全額免除に推薦 4)Grinnell Collegeを第一志望校とする者を大学からの授業料全額免除に推薦(家庭の経済事情によっては全額免除にならない場合あり) 5)Union Collegeを第一志望校とする者を大学からの授業料全額免除に推薦 6)Knox Collegeを第一志望校とする者を、大学からの授業料一部免除(3万5千USドル~)に推薦。基金より毎年1万USドルを4年間支給 7)Lake Forest Collegeを第一志望校とする者を、大学からの授業料一部免除(2万5千USドル~)に推薦。基金より毎年1万USドルを4年間支給 8)Earlham College を第一志望とする者を、大学からの授業料一部免除(約70%以上免除)に推薦。基金より毎年1万USドルを4年間支給 9)Mount Holyoke Collegeを第一志望校とする者を、大学からの授業料一部免除(2万5千USドル~)に推薦 |
支給期間 | 基本的に4年間 |
他の奨学金との併給 | 併給できる場合がある(要個別相談) |
募集人数 | 1):2名 2)~9):各1名 |
募集時期 | 応募締切:2020年9月18日(金)(消印有効) <終了しています> |
ここでご紹介した奨学金はほんの一部で、ほかにもたくさんの留学生向け奨学金があります。ご家庭の状況に合った奨学金を見つけるには、できるだけたくさん情報を集め、比較・検討してみると良いでしょう。
*注意*
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、制度の内容等は予告なく変更される可能性があります。各奨学金制度を提供する団体等の公式ホームページ等で、自身が留学を検討する、または決定する時期に合わせて、最新情報を随時チェックしてください。
まとめ
いかがでしたか?
海外留学に興味はあっても、自分の英語力への不安だけでなく、「留学費用って高そうだから親に負担をかけたくない」など、海外留学への憧れをおうちの方に言い出せない高校生が意外と多くいます。そんなとき、返済義務のない留学生向けの「奨学金」があれば、こんなに心強いことはありませんよね。
もしお子さまが海外大学を気になっているようであれば、おうちの方は「これならお子さまに合うかもしれない」という奨学金について調べてみませんか?そして、奨学金にチャレンジすることで海外留学の夢を叶えるチャンスが広がることを、お子さまに教えてあげてください。奨学金獲得を目指して、一緒に頑張ってみない?と提案するのもいいですね。
このように奨学金は、お子さまが最良の進路選択をできるよう、親として「形に残る」サポートができる制度とも言えるのです。
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取材・文:海外進学・留学ラボ編集部