サポートに取り組む方々のインタビュー

学校・教育から スペシャルニーズを持つ子どもたちの学びを支える高校選び 第1回

全国で高校の学区の改編が進み、進学できる高校の選択肢は増えています。それだけに、発達障害がある子どもとその保護者にとって、子どもに合った高校探しは重要なテーマになっています。発達障害がある子どもの学びの支援に力を注いでいる通信制高校・明蓬館高等学校の学校長・理事長である日野公三さんに、発達障害がある中学生が進学先を選ぶ際のチェックポイントを伺いました。

  

 日野公三さん
内閣府認定特区明蓬館高等学校 学校長・理事長 ひの こうぞう 日野公三さん →プロフィール
日野さんが校長・理事長を務めている通信制高校の明蓬館高等学校では、発達障害がある子どもたちの支援に力を入れているそうですが、まずその概要を教えてください。
日野さんが校長・理事長を務めている通信制高校の明蓬館高等学校では、発達障害がある子どもたちの支援に力を入れているそうですが、まずその概要を教えてください。" 全国広域制通信制高校である明蓬館高校は、SNEC(スペシャルニーズ・エデュケーションセンター)と呼ばれるサポートセンターを全国に設置しています。そこでは、発達障害の支援スキルを持った支援員と臨床心理士などの心理職が相談員として常駐し、各教科の教員とチームを組んでいます。支援員は学習面、行動面、対人関係面を、相談員は生徒と保護者両方の相談支援、計画相談を担当し、発達に課題を持つ高校生が特別支援付きの普通科高校教育を受けることができます。授業は一斉授業ではなく、自分の興味やペースに合わせて、パソコンやタブレットでネット授業を視聴し、成績評価はテストに加えて、時間をかけて取り組むレポートなどの学習成果物も評価の対象にします。私たちは発達障害を「スペシャルニーズ」としてポジティブにとらえていますが、それは、得意不得意の凸凹は大きくても、それぞれの特性に応じた学習環境が整えられれば、豊かで、深い学びが実現できるからです。
発達障害がある子どもは、高校進学後、学びの環境に適合できず、不登校になったり、退学したりするケースも多いようです。発達障害がある子どもはどのような視点で高校を選ぶとよいのでしょうか。
発達障害がある子どもは、高校進学後、学びの環境に適合できず、不登校になったり、退学したりするケースも多いようです。発達障害がある子どもはどのような視点で高校を選ぶとよいのでしょうか。" 近年、全日制の高校においても、授業におけるICTの活用が徐々に普及し、また成績評価もペーパーテスト一辺倒から多様な活動を評価する多面的・総合的なものになってきています。今後ますます、発達障害がある子どもたちにとっても学びやすい環境が、全国の学校に広がっていけばよいと思います。ただ、現実には、発達障害がある子どもの学習に対して、どのようなサポートが必要か、その理解も実際の整備もまだ現場では十分とはいえません。そこで、発達障害がある子どもはどのような高校を選べばよいか、また、高校進学後に子どもたちはどんなサポートを必要としているのかを保護者のかたに知ってもらうために、「スペシャルニーズを持つ生徒の高校選びのための15のチェックポイント」をまとめました。発達障害がある子どもたちの学びの環境をつくる上で必要な視点を整理したものとして、お子さまに寄り添ってきた保護者のかたには納得していただけると思います。

【チェックポイント】
①学校の教職員が発達障害の正しい診断名と診断基準、特性について答えられるか
②教職員がネガティブな言葉、態度を意図せずに安易に用いず、ポジティブな言葉、態度を意図的に、しかし自然に用いているか
③学校内にアセスメント体制があるか、医療機関との緊密な連携体制があるか
④生徒数に見合った、臨床心理士や特別支援教育の学習支援者、精神保健福祉の有資格者がいるか
⑤個別教育支援計画(IEP)の運用は行われているか
⑥保護者への相談支援は行われているか
⑦卒業後の進学、就労における継続的な支援に役立つ、IEPと支援実績の蓄積が組織的に行われているか
⑧紙のプリントを極力少なくし、多様なデバイス(PC、タブレット、スマホなど)でeラーニングで課題レポートに取り組めるようになっているか
⑨課題レポートは間をおかずに即座の採点とフィードバックが行われているか
⑩成績評価を制限時間付きの一斉テストに依存していないか。成果物(ポートフォリオ)など、多様な成果と評価軸で評価しているか
⑪生徒がWebベースで学びやすい認証ページ(学習支援システム)および生徒管理システムは稼働して、教職員が使いこなせているか
⑫校長あるいは副校長が議長を務め校内委員会、ケース会議は定期的に行われているか
⑬就労移行支援事業所の情報収集は行われているか、的確な評価眼を組織的に持ち合わせているか
⑭登校時に落ち着いて学習に取り組めるブース環境は用意されているか
⑮学習障害の個別的なニーズに沿った教材および補助教材が提供される体制があるか

以上の15のポイントは、長年、発達障害がある子どもの学習を支援する中で私たちが大切であると実感しているものばかりです。発達障害がある子どものよりよい学習環境を追求する上で、社会全体で共有しておくべき観点だと考えています。発達障害がある生徒にとって良い学校は、そうでない生徒にとっても満足と達成感を感じる良い学校だからです。全日制高校はもちろん、通信制高校においてもすべての学校が上記のポイントをクリアしているわけではありませんが、通信制高校高校ならば7つ以上、全日制高校でも5つ以上満たしている高校を選びたいものです。
次回は、発達障害がある子どもの学びの場としての通信制高校の可能性についてさらにうかがいます。