サポートに取り組む方々のインタビュー

団体・企業から 「ふつうってなんだろう?」発達障害は特別じゃない!世の中に広く知ってもらうためのアニメ―ション制作

発達障害の方の特性や悩み、困難を知ってもらい、多様性への理解を深めることをねらって作られた

2分のアニメーションシリーズ「ふつうってなんだろう?」を制作された

ディレクター野崎瑛理子さん、角田真樹子さんに、番組制作にかけた思いを伺いました。

  

 2分のアニメーションシリーズ「ふつうってなんだろう?」はこちらからご覧いただけます。

  

  

野崎瑛理子さん / 角田真樹子さん
NHK制作局第1制作センター 青少年・教育番組部 ディレクター  のざきえりこ        つのだまきこ 野崎瑛理子さん / 角田真樹子さん →プロフィール
2018年11月にEテレで特別キャンペーンとして放送され、「u & i」のサイトで視聴できる「ふつうってなんだろう?」を制作されましたが、その内容とこだわりどころについて教えてください。
2018年11月にEテレで特別キャンペーンとして放送され、「u 「ふつうってなんだろう?」は、周りの人と感じ方が
違う、他人とうまくコミュニケーションを取れない、
感情をコントロールするのが難しい…などの、
「どうにもならないふつう」を抱える人たちが、苦しみの先に見出した希望を、自らの声で語るアニメーションシリーズです。
全部で5つの作品を制作。5つの例それぞれでご本人が声で登場するというところが特徴的です。「学習障害」「アスペルガー症候群」「感覚過敏」など、困っていても、本人の言葉だけでは周りの人も気づかなかったり、なかなか理解しにくかったりする状況を、少しでも知ってもらおうと、アニメーションを用いて表現しました。

ユウさんは、以前担当した「いじめを考えるためのスペシャル番組」に応募してきた18歳の子です。アスペルガー症候群で、予想外のことがおきると数分間固まってしまうという症状。
診断を受けた後も、先生から「怠けている」「どうしてふつうにできないの」と言われ続け、何度も転校し、結果、若くして、うつと睡眠障害になり、薬の服用をしていました。診断を
受けているにもかかわらず、理解されず配慮されないことに、非常に怒りを感じました。この制作が決まった時に、真っ先にユウさんが浮かびました。ユウさんの経験を是非伝えたいと思いました。

とても絵がうまいユウさんは、才能にあふれて、世の中の見方も独特で、一緒にいるととても面白いです。
「障害者としてつらい経験をしたからこそ他の障害者に役立つ仕事がしたい」と、障害がある方のための洋服のデザインを考える仕事につくことを目指して、美大入学に向けてデッサンの
勉強をしています。深い悲しみ、生きづらさを感じてきたからこそ、「誰かのために役に立ちたい、生きやすい社会にしたいという思い」を強く持ったすごい方なのだと感じました。
感性が豊かすぎて疲れてしまうのかもしれませんが、本当に魅力的な人でした。

「苦しんできた人だからこそ世の中をよくする力がある」今回取材させて頂いた当事者の
皆さんから、そう感じました。皆さん、生きづらさを抱えてきたけれども、自分を支えて
くれる人との出会いを大切にし、そこで自分自身と向き合い、様々な努力をして、誰かのために役に立ちたいと歩んでいるとっても魅力的な方々です。そんな魅力的な方たちを知って
ほしい!という気持ちで全力で取り組みました。

アニメでの表現にもこだわりがあったかと思います。一緒に制作した角田さんが担当した感覚過敏などをテーマにした作品はどのように作ったのか、お教えください。
アニメでの表現がかなり難しい、「感覚過敏」などの“もの感じ方”をリアルに表現することにこだわったのが、角田ディレクターが作った「フミヤのふつう」と「ナオキのふつう」の回
です。当事者の方とアニメーターとの間に何度も入って丁寧なやりとりを重ねていました。

角田さん:
他の人と感覚が違うことで、周囲との差を感じてきたフミヤくん。そして、注意して話を
聞いていても、突然聞こえなくなってしまうことがあり、人との関わりをあきらめたこともあったナオキくん。周囲の対応や関わり方が変化したことで、困難な状況に希望の光が見えてきたという点は、2人のエピソードに共通していました。
取材を進めるにつれて、周りの人の理解を促すために、このアニメーション制作の機会を通じて、フミヤくんやナオキくんが見ている世界をより具体的に、さまざまな人と共有できれば!という思いが強くなっていきました。
当事者ご本人が感じていることをリアルに表現しながら、決して強調はせず、ありのままを、等身大の気持ちで、等身大の言葉で表現してもらうにはどうしたら良いか、立ち止まって考えることを大切にしていたような気がしています。

当事者の方のインタビューをただ流すだけでは伝わらない、アニメーションだからこそ、
視聴者の方の脳に直感的に届けられるメッセージがあると感じ、アニメーターの方とも何度も
打ち合わせをしました。その中で生まれた化学反応もたくさんありました。
例えば、感覚過敏を主なテーマとして扱ったフミヤくんの回では、アニメーションを担当して
くださった今津良樹(いまづよしき)さんと、さまざまな感覚を言葉で交わしながら、
制作が進められていきました。

サラダを食べた時に、「ラーメンにチョコレートを入れたような感じがする」という
フミヤくんの感覚をビジュアルで表現するだけでなく、フミヤくんの頭の中にどんな音が
響くのかなど、苦手な感覚についても対話を重ねました。
他にも、外を歩いていると、「トラック」や「バイク」、「サラリーマンがタバコを吸って
いる」など、あらゆる情報が飛び込んできて、疲れ切ってしまう状況を描く際には、
「どのようににおいが迫ってくるのか」を追求。
フミヤくんから「においに踏みつぶされるような感じがする」という言葉が飛び出し、その
言葉を大切な手掛かりとして、今津さんは「大きく飛び出すバイク」やノイズを描きこむ
などの表現を編み出してくださりました。

「においがおしよせる」という表現を深める中でたどり着いた「においに踏みつぶされる」
という言葉を、映像を通じて、よりリアルなものに変換していく。

「このことを知って欲しい」、「少しでも伝えたい」そうしたフミヤくんの思いを、制作する
みんなが共有し考えていくことで、このような化学変化が生まれていったのだと思います。
不思議なエネルギーを感じました。私も現場に立ち会えたことは何にも代えがたい喜びとなっています。

最後に番組制作を終えての今の心境をお聞かせください。
放送中に「ふつうってなんだろう?」という言葉がネット上で検索され、「自分の『普通』は他の人と同じとは限らない。」「上手く言えないけど、放送してくれてありがとう」
「たくさんの人に届いてほしい」など、前向きな感想を見ることができたことが、とても嬉しかったです。でも何よりもうれしかったのは、出演された5人全員から、喜びの声をいただけたことです。

ユウさんには、「目に見えづらい障害を目に見えやすくすることは私の夢でもあったので、
アニメーターの方と一緒にこんな素晴らしい形で夢を叶えられて良かった」と言っていただけました。「発達障害に生まれて確かに苦しいことは多いですが、こうして私の経験が
アニメーションになり、テレビで伝えられ役に立つのであれば、悪いことばかりではないと思えた」そうです。

落語家の柳家花緑さんは、観終わって嬉しくて涙が出たそうです。
ご自身の辛かった過去が救われた思いだとおっしゃってくださいました。
現在は明るくお話しされていますが、小さい頃からつらさを感じてこられたのだと感じました。花緑さんを取材して、私自身が元気を頂きました。

取材を終えて、「ふつう」の人はいないという気持ちがますます強くなりました。発達障害という言葉もピンと来ていません。環境が変わったら、その人の困りがなくなるかもしれないですし、社会が障害にしてしまっていることも多いと感じています。困っていることがあればお互いにそれを聞いて解決していく空気や場を作っていけたらと感じました。

もしコミュニケーションが変わっていると感じたら。変な決めつけをせず、「どうしてなんだろう」とゆっくり構えればよいと思います。まだ今まで出会ったことがないだけで、一緒にいればコミュニケーションをとれるようになると信じています。

おかげさまで自分自身は社会に出てから様々な人に会う経験をいただいていますが、学生の
うちからもっといろんな人に会えていたら良かったのにと感じています。ぜひ若い方たちには、いろんな人と出会い交わって欲しいです。
現在担当している「u & i」でもこの思いを伝えていきたいです。
   ※NHK Eテレ「u & i」 (多様性について考える小学生向け人形劇)サイトに移動します。