サポートに取り組む方々のインタビュー

団体・企業から 障害のある人もない人も 誰でも簡単に楽器を楽しめる「フィギャーノート」 第2回

楽譜を読むのが難しい人のために、フィンランドで開発された新しいタイプの楽譜「フィギャーノート」の普及に取り組む一般社団法人フィギャーノート普及会Happy Muse。代表理事である松田真奈美さんが、NPO法人発達サポートネットバオバブの樹(以下バオバブの樹)が主催するグループワークで指導している様子を見学してきました。

松田 真奈美さん
一般社団法人フィギャーノート普及会 Happy Muse代表理事 まつだ まなみ 松田 真奈美さん →プロフィール
今日はNPO法人発達サポートネットバオバブの樹が主催する、幼児から小学校4年生の子どもが参加する2つのグループワークを見学させていただきました。いずれも、ピアノの音に乗せて自分の身体を動かしたり、好きな楽器を選んでピアノの音の強弱やテンポに合わせて自由に合奏したりした後、フィギャーノートを使ってハンドベルや鍵盤ハーモニカの演奏を楽しみました。まず、活動のねらいを教えてください。
今日はNPO法人発達サポートネットバオバブの樹が主催する、幼児から小学校4年生の子どもが参加する2つのグループワークを見学させていただきました。いずれも、ピアノの音に乗せて自分の身体を動かしたり、好きな楽器を選んでピアノの音の強弱やテンポに合わせて自由に合奏したりした後、フィギャーノートを使ってハンドベルや鍵盤ハーモニカの演奏を楽しみました。まず、活動のねらいを教えてください。" グループワーク立ち上げの時、バオバブの樹の言語聴覚士さんから「個別の言語相談に通う子どもたちに、言語だけではないつながりや表現を感じてほしい」ということを伺いました。

コミュニケーションの発達には、その土台となる「自分」がバランスよく育っていることが必要です。具体的には、感覚、運動、理解、情緒面などです。これらは日々の積み重ねが必要なので、家庭でもヒントになるような内容を含んだリトミック(音楽の身体表現活動)を行っています。さらに幼稚園や小学校で自分を表現したりコミュニケーションを取るのが難しい子どもは、整理された環境で、小さな成功体験を積み重ねたり、困った時の対処を学んだりすることが大切です。この点でもグループワークの中でよい体験ができるよう導きながら、参加する子どもたちが自分らしさを充分発揮できて、それがグループに受け入れられ、みんなで「楽しい」と感じられるような音楽活動ができるよう心がけています。グループでの体験は個別指導でフォローし、また次のグループワークへとつなげます。

具体的に、どんなねらいを持って、何をしたかをご説明します。まず、前半は私がピアノを弾いて、子どもたちは身体表現を楽しんだり、マラカスやギロなどのパーカッション楽器を自由に鳴らしたりしました。これらは感覚・運動・理解の育ちとつながりを促したり、自由に自己表現したり、他者との交流を促したりすることを目的とした活動です。音楽は感情や感覚にさまざまな刺激を与え、活動をコントロールしたり運動や理解を促したりすることができます。さらに音楽には集団凝集性、つまり自然とみんなが一つにまとまってくる性質もあります。音楽にのってみんなが集まってきて、呼吸を合わせたり、誰かが何か仕掛けたら他の人が反応したりするというような、非言語コミュニケーションが楽しめます。毎月やっていると、コミュニケーションの質も変化していきます。

後半のフィギャーノートを活用した楽器演奏では、低年齢のグループでは一人ひとりが自由に曲を選んで演奏し、担当のスタッフに聞いていてもらいました。小学生グループでは、ゆっくりしたテンポで合奏しました。幼稚園や学校では音符の読み取りが苦手な子どもや不器用な子どもは置いてけぼりになってしまいがちです。しかし、このグループワークでは、子どもたちが自分のペースで演奏できるので、安心して取り組むことができます。小学生グループの合奏では、仲間と一緒に最後まで演奏できたという満足感も得られたと思います。それらの体験を通じて、子どもの中に「自分にもできる!」という自信が芽生え、演奏が楽しいと感じることができれば、別の曲も演奏してみたいという意欲にもつながります。

学校の教科の中で音楽は、国語や算数に比べると教員や保護者の方にとって「できないと困る」という意識が比較的低いかもしれません。しかし、子どもたちの事情は少し異なっており、合奏で置いてけぼりになる時間や、できないのにみんなの前で演奏力のテストを受けなければならない時間は「地獄」だと言うのです。どんな学習より苦痛だ、という声を耳にすることが少なくありません。音楽の授業では、みんなで音を合わせる楽しみを分かち合い、美しい音色を探求する中で情緒や豊かな想像力を育むことが最終的な目的だと思いますので、五線譜の読み取りなどが妨げにならないようにすべきだと思います。まだまだ大人たちの中には「五線譜が読めないといけない」という思い込みがありますが、フィギャーノートがあれば難しいクラシックのピアノ曲も、オーケストラやバンドの楽譜としても使うことができます。五線譜を使う人とフィギャーノートを使う人が一緒に練習する場合も問題は生じません。鍵盤だけでなく、楽譜にできる楽器はほとんどフィギャーノートを使えます。障害のあるなしに関わらず、五線譜は普段読み慣れていない人には敷居の高いものです。まずはフィギャーノートのような手段を使って音楽を楽しみ、必要が生じたら五線譜に移行するという考えがあってもよいのではないでしょうか。
先ほどのグループワークでは、子どもたちが集まる前に、活動をサポートするスタッフの方たちが入念な打ち合わせをしていました。どのようなことを話していたのですか?
先ほどのグループワークでは、子どもたちが集まる前に、活動をサポートするスタッフの方たちが入念な打ち合わせをしていました。どのようなことを話していたのですか?" このグループワークは、個別療育を行っている子どもが対象なので、個別療育に関わっているスタッフから、この1ヶ月での子どもの成長や一人ひとりが抱えている課題などを伺い、スタッフ全員で共有するようにしています。子どもたちが活動している間、先輩ママスタッフさんは保護者の一人ひとりに、子どもの家庭や学校での様子を丁寧に聞いて下さいます。ヒアリングの内容は、子どもの抱えている困りごとや、家庭と学校の先生との連携についてなどさまざまです。そうして継続的に把握したお子さんの状態をグループワークの前に共有し、どの子を誰が、どのように見ていくかを確認します。

いろいろな人たちが、共通認識を持ちながら、それぞれの視点で子どもに関わることは、その子にとっても保護者の方にとっても大事なことだと思います。保護者の方にとっては、ここでしか言えないこともあるでしょう。子どもが活動を楽しむだけでなく、保護者の方の言葉に耳を傾け、それを複数のスタッフで共有した上で子どもを見守るということはとても大切なことだと思っています。
最後に、フィギャーノートは特許製品とのことですが、利用上の注意点はありますか。
フィギャーノートの楽譜やシールを入手してお使いになることは、どなたでもしていただけます。一般向けの体験会や講習会も開催していますので、使い方がわからなかったり、不安があったりする場合は、そちらにご参加いただくことも可能です。

注意が必要なのは、無断で営利活動に使ったり、勝手に楽譜システムを改変したりしてはいけないということです。これらは法律で禁止されています。従来のカラー楽譜や色付け楽器のほとんどは、本来のフィギャーノートのしくみとは少し異なります。楽譜出版社や楽器会社によって、配色や表記法がバラバラなのです。しかし、だからといって、ご自身の楽器の色に合わせてフィギャーノートの配色を変えるなど、「似て非なる楽譜」に作り替えてしまうと、のちのち困るのは利用者である子どもや、指導者です。
フィギャーノートの開発者は、世界中のどんな境遇の人も、一つの楽譜をみて、すぐに共通理解ができるような、「第二の五線譜」を目指しています。私たちもその考えに共感して普及活動を進めています。健全に普及が進むよう、ご理解とご協力をお願い致します。