サポートに取り組む方々のインタビュー

団体・企業から 障害のある人もない人も 誰でも簡単に楽器を楽しめる「フィギャーノート」 第1回

楽譜を読むのが難しい人のために、フィンランドで開発された新しいタイプの楽譜「フィギャーノート」。日本では、東京都狛江市が特別支援教育にいち早く取り入れ、教育効果を上げています。「フィギャーノート」の普及に取り組む一般社団法人フィギャーノート普及会Happy Muse代表理事である松田真奈美さんにお話を伺いました。

松田 真奈美さん
一般社団法人フィギャーノート普及会 Happy Muse代表理事 まつだ まなみ 松田 真奈美さん →プロフィール
「フィギャーノート」とはどのようなものですか?
「フィギャーノート」とはどのようなものですか?" 「フィギャーノート」は、フィンランドにある知的障害者が通う音楽学校の先生、カールロ・ウーシタロさんが1996年に開発した新しい楽譜です。楽譜を読むことが苦手な人のために、音符を「色」と「形」で表しているのが特徴です。「音名」には主要音「ド・ソ・ファ」に最も注目しやすい「赤・黒・青」を割当て、その他の音は、コード奏で一緒に弾く音が同系色になっています。「音の高さ」は「◯、△、□、×」と弁別しやすい図形で示し、「音の長さ」は「棒の長さ」、「半音」は「↖︎↗︎(斜め矢印)」、「コード(和音)」は「箱」で、というように、すべてを迷いの生じないシンプルな図形で表しています。4オクターブ分の形が決められているので、ほとんどの曲を「フィギャーノート」で表現することが可能です。

「フィギャーノート」の使い方はとても簡単です。まず鍵盤ハーモニカや木琴など弾きたい楽器に、その音に対応したシールを貼ります。そして、演奏者は「フィギャーノート」に描いてあるマークと同じ鍵盤を弾くのです。目で見たものと同じマークの鍵盤を弾くだけなので、楽器を演奏したことのない幼児やシニアの方でも、その場で簡単な曲が演奏できてしまいます。
発達障害がある子どもがフィギャーノートを活用するメリットを教えてください。
発達障害がある子どもがフィギャーノートを活用するメリットを教えてください。" 発達障害がある子どもの中には、楽器を弾こうとしても、「楽譜を読みとるのが難しい」「記譜のルールが理解しがたい」「オタマジャクシを音名に置き換えるのが困難」「今読むべき場所に素早くフォーカスできない」「フレーズをまとまりとして捉えたり、視点を滑らかに移動させて正確に読み取ったりすることができない」「音符の意味が分かってもそれが鍵盤のどこなのか、迷ってしまう」「楽譜から鍵盤に目を落とした瞬間、読んだ内容を忘れてしまう」「指をスムーズに動かせない」などさまざまな理由で、演奏を楽しむことができないことがあります。特に、文字の読み書きに困難を抱える発達性ディスレクシアの子どもは、楽譜の情報を読みとるのが苦手なことが多く、音楽の授業を苦痛に感じている子どもは少なくありません。

ある小学生が、学校の授業で鍵盤ハーモニカやリコーダーがうまく演奏できず苦戦していました。周囲は、その子は音楽が苦手なのか、道具を使うことが苦手なのか分からず、不思議に思っていました。保護者も思いやりのつもりで「嫌いならやらなくてもいいよ」と子どもに声をかけていたそうです。
そんな時、音楽療法でフィギャーノートを知り、これを使えば演奏できることが分かると同時に、楽譜が読めていなかったことにも気づきました。その子は発達性ディスレクシアで、音符に振られたカタカナを読むことに時間がかかり、楽器の演奏ができなかったのです。
そこで、保護者が小学校の先生の許可を得て、音符に振ってあるカタカナにフィギャーノートと同じ色を塗り、授業に臨ませたのです。すると、音符のカタカナが読みやすくなって少しずつ弾けるようになり、苦手感が減ったことで前向きに授業に取り組めるようになりました。その子自身、実はこれまでも演奏したいと思っていたけれど、どうしたらできるか分からず、本人も困惑していたのでした。
6年生になった今では学校の休み時間にも、お友達とリコーダーを楽しむまでになりました。

この子の成長からもわかるように、発達障害がある子どもが「フィギャーノート」を活用するメリットは「今までできなかったことが、自分一人でもできるようになった」という自信と達成感を得られる点だと思います。友だちと一緒に弾きたいという気持ちがあるのに、思うように演奏できずに辛い思いをしていた子どもが、「フィギャーノート」なら自分も演奏できることに気づき、音楽の授業に前向きに参加できるまでになりました。「道具を活用すれば自分もできる」と知ることは、困難さを抱える子どもにとって、学びの意欲、自己肯定感や自己効力感を培い、自己実現に向かうために非常に重要なことです。
ただ、子どもにしてみれば、「ほかの人は黒い楽譜を使っているのに、自分だけがカラフルなフィギャーノートを使うのはいやだ」という気持ちになるかもしれません。だから、発達障害がある子どもだけが特別に使わせてもらうのではなく、全員が五線譜でもフィギャーノートでも、好きな方を使ってよいことになればいいなあと思っています。

現在、一般社団法人フィギャーノート普及会HappyMuseでは、小学校の音楽教科書に対応した「小学生の音楽 フィギャーノート版」「音楽のおくりもの フィギャーノート版」を販売中です。
次回は、フィギャーノートを使ったグループワークの様子をご紹介します。