サポートに取り組む方々のインタビュー

団体・企業から 発達性ディスレクシアがある子どもを支え、保護者をつなぐ 第3回

発達性ディスレクシアがある子どもとその家族の支援に取り組むNPO法人バオバブの樹の活動には、言語聴覚士の沖村可奈子さんを中心に、臨床心理士などさまざまな専門家が参加しています。さらに、発達性ディスレクシアがある子どもを育てる保護者の方が、ママスタッフとして参画し、若い保護者の方の相談に乗るなど、保護者のネットワークづくりに貢献しています。

沖村 可奈子さん/ママスタッフのみなさん
特定非営利活動法人発達サポートネット バオバブの樹 理事/言語聴覚士 おきむら かなこ 沖村 可奈子さん/ママスタッフのみなさん →プロフィール
保護者の方がサポートに参画することでどのようなメリットがあると沖村さんはお考えですか?
【沖村さん】バオバブの樹は、現在、6人のママスタッフさんと私の7人が中心となり運営しています。みなさんとは、それぞれに難しさを抱えるお子さんがまだ小さい時に巡り合い、共にお子さんのことで悩み、歩んできたという感覚があります。ママスタッフの皆さんは、ご自分たちのお子さんのことを通して、様々な苦手を抱えるお子さんたちのことを深く学んで下さっただけでなく、その経験を通して、またほかの保護者や専門家ともネットワークをつくり交流しながら、バオバブの樹を共に作ってきていますから、ある意味では専門家以上に経験が豊富といえます。そんな先輩ママが、小さな子どもを持つ保護者の方のお話しをじっくりと聞いて下さり、不安や悩みに寄り添い、必要に応じて「うちもそうだったよ」「こんな工夫をしてきたよ」などと話して下さることは、不安と孤独で押しつぶされそうな渦中のママたちにとって、何よりも支えとなります。また、私は言語聴覚士を養成する専門学校で教えているのですが、毎年、「発達障害のお子さんの検査」の授業に、ママスタッフさんたちをゲスト講師としてお招きしています。検査をすすめる時、不安でいっぱいな親御さんの気持ちにどんな説明が届くのか、どういう言語聴覚士なら信頼してみようと思えるのか、実際の面接場面を通しての学びは学生にとって、非常に得難い体験となります。 医療や福祉の専門家と呼ばれる人たちは、ややもすると保護者の方に対して「専門家ではないからわからないだろう」という態度で接しがちな気がします。けれど、お子さんを真ん中に、そのお子さんにとって、本当に必要な療育を考え、実行していくために、専門家と呼ばれる人たちはもっと保護者の方の力を信じ、力を合わせて共に歩むべきだと私は思っています。ママスタッフさんたちの活躍に加えて、「すーふ」に通い大きくなったお兄さん、お姉さんたちがサポートスタッフとして活躍してくれる仕組みも整ってきました。バオバブの樹はとても理想的な運営スタイルであると、日々、ありがたく思っています。
ママスタッフの皆さんにお伺いします。お子さまの障害、そして沖村さんとの出会いについて教えていただけますか。
【ママスタッフAさん】私は子どもが小学校3年生になるまで、読み書きに困難を抱えていることに気づいていませんでした。学校の先生は子どもに対して「なぜできないのか」と怒ってばかりいました。家でも学校でも読み書きの苦手に適切に対応してもらえない子どもは、3年生になったころ、授業中にじっとしていられず、床を這い回るようになりました。立ち歩くと怒られるので四つん這いになっていたのです。先生からは「私の手に負えません」とまで言われてしまいました。周囲からも「反抗期だよ」とか「しつけの仕方が悪いのでは」などといろいろなことを言われました。結局、地元の教育センターに相談したところ、書字に困難があるのではないかと指摘され、沖村先生との出会いへとつながりました。今、子どもは高校生です。今も読み書きは苦手で、理科や社会のテストなのに、漢字が思い出せずひらがなで答えると「×」にされてしまうことに、私は憤りを感じますが、息子は今の世の中の仕組みがそうなっているから仕方がないと、へこたれず前向きに頑張っています。小学校3年生のころは、「学びたい」という気持ちが全然持てなくなっていたのに、自分のことを理解して、他にも理解して応援してくれる人もいると知った今は、「学ぼう」「知りたい」という気持ちがしっかり持てています。 【ママスタッフBさん】子どもが通う保育園の先生に「うちの子はちょっと言葉が遅い気がするのですが」と話したところ、先生ははっとした様子で「やっぱりそう思っていましたか。お子さんは、集団に向けた指示がうまく理解できていないようです」と返されました。確かに言葉が少し遅いとは思っていましたが、たいしたことではないはずだと考えていたので正直びっくりしました。でも、たくさんの子どもを見てきた保育士の方がそう言うのであれば、放置していてよいことではないのだろうと考え、紹介された市の療育センターに相談したのが沖村先生との出会いにつながりました。その後、たくさんの保護者の方とお話ししてきましたが、子どもの発達に疑問や不安を感じていたけれど、それを認めたくなくてだれにも相談してこなかったというケースが少なくないことがわかりました。一歩を踏み出すことで子どもの置かれた状況が大きく改善することがあるのですから、疑問や不安は一人で抱え込まないでほしいと思います。
先輩であるママスタッフの皆さんから、このサイトをご覧になっている保護者の方へのメッセージをお願いします。
先輩であるママスタッフの皆さんから、このサイトをご覧になっている保護者の方へのメッセージをお願いします。" 【ママスタッフCさん】沖村先生はいつも私たちに「子どもたちは頑張っていますよ」とおっしゃいます。私も今ではそれはわかっているつもりです。しかし、それでも、つい忘れてしまい、「もうちょっと頑張ってみたら」と無理にやらせようとしてしまうことがあります。子どものことを思うあまりに、この子はもっと頑張れるはずと考えてしまうのです。そんな自分にふと気がつき、「すでに十分頑張っている子どもを信用してあげなければ」と自分に言い聞かせることもあります。親だからこそそれが簡単ではないこともよくわかりますが、親だからこそ、どうか子どもを信用してあげてほしいと思います。 【ママスタッフBさん】沖村先生に出会う前は、「やればできる」と子どもに無理を強いていました。頑張ればできるし、今無理してでも頑張らないとあとで苦しむ、これはあなたのためなのだ……と。今振り返るとそれは親である自分の不安を押しつけていたのだと思います。結局、そうした無理強いは、子ども本人のためにならなかったのですが、それがわかった今でも、つい無理を言ってしまうことがあります。ですから、私も子どもに対してすべてうまくいっているわけではありませんが、やはり子どもを信頼して、子どもの気持ちを確かめてほしいと思うのです。ただ、ずっと子どもの気持ちに気を配ってこなかったのに、急に「あなたはどうしたいの?」と聞いても、子どもは「どうでもいい」「わからない」と言うかもしれません。でも、それは子どもに自分の考え、希望がないからではなく、自分の気持ちを意識することや、自分の思いを話すことに難しさを抱えているからかもしれません。だから子どもに対しても答えを急がせず、そして子どもが本心を話せるような環境作りを普段から心がけてみてはどうでしょうか。思っていることをきちんと伝えるのは、大人にとっても簡単ではありませんよね。だからこそ、親子で思っていることをお互いに伝え合えるように、普段の生活の中で練習していくことが大切だと思います。