サポートに取り組む方々のインタビュー

団体・企業から 発達性ディスレクシアがある子どもを支え、保護者をつなぐ 第2回

文字の読み書きに困難を抱える発達性ディスレクシア。障害がある子どもに対して、学校や家庭ではどのようなサポートが望まれるのでしょうか。バオバブの樹の理事で、言語聴覚士の沖村可奈子さんにうかがいました。

沖村 可奈子さん
特定非営利活動法人発達サポートネット バオバブの樹 理事/言語聴覚士 おきむら かなこ 沖村 可奈子さん →プロフィール
発達性ディスレクシアがある子どもに対して、学校や家庭ではどのようなサポート、配慮を行うことが望まれるのでしょうか。
まず、読み書きに関する困難さが一人ひとり異なるように、支援のしかたも一人ひとり違うことを理解していただきたいと思います。発達性ディスレクシアの症状の違いによってアプローチの仕方は異なりますし、そのお子さんが抱えている困難が発達性ディスレクシアだけなのか、それともADHDやASD(自閉スペクトラム症)などと併存しているのかによっても支援のあり方は大きく変わってきます。 バオバブの樹が行う支援事業の一つ「ことばと読み書き すーふ」では、お一人お一人、知的発達の状態、読み書きの習得度、読み書きの力を支える認知機能、併存している他の発達障害についてなどのアセスメントを行い、その結果に基づいて考えた個別プログラムを行っています。こういった個別アプローチは非常に大事なのですが、そういう機会に巡り合えるお子さんばかりではないという現実があります。個別支援を受けられない状況であればなおさら、学校やご家庭での、そのお子さんに寄り添った支援が重要となります。例えば、読みの難しさがあるようであれば、どうしたら読みやすくなるかを考えます。漢字にはふりがなをふる、文章を読みやすくするために縦書き・横書きを変えてみる、一度に提示する文字情報を少なくする、文字を大きくする、それでも難しければ、読み上げて伝える、などです。書きの難しさが大きいようであれば、書く負担を減らすことを一緒に考えます。例えば、先生に黒板の写し方や宿題について、黒板に書いた内容をプリントでもらえるか、先生が色チョークで囲った所だけ写すことは可能か、漢字の宿題の量を配慮してもらえるか、パソコンなどの使用を認めてもらえるか、などを相談します。 どんな方法がよいかは子どもによって、また、同じ子どもでも年齢によって異なりますので、本人ときちんと話し合って試し、もし合わない時は、一つの方法にこだわらず別の方法に切り替えることが大切です。もちろん、学校現場であれば、その子だけが特別にならない学級運営がとても大事です。学ぶ方法は一つではないとクラスのみんなが共通認識できるような配慮があれば、他にも助かる子がたくさんいるはずです。保護者の方が学校の先生に伝えただけでは、理解を得られないことも、残念ながら少なくないため、私が学校でのケース会議に同席して、お子さんの状態やその時点で必要な支援を、専門的な立場からお伝えする出張相談は、とても重要な活動の1つです。 読み書きは、学習成果に直結する為、運動やお絵かきなどに比べて、親としての期待が大きく、最初は子どもの苦手を受け入れることが難しいかもしれません。けれども、保護者や学校が早目に気付き、すぐにサポートや配慮をすることで、結果的に子どもの学ぶ権利は守られますから、専門家による個別のアセスメントや指導を受けて適切なサポートや配慮を早期に考えることが大切です。
発達性ディスレクシアがない子どもでも、漢字を覚えるときは繰り返し練習をします。「発達性ディスレクシアがあっても、人よりもたくさん練習すればできるようになる」と考え、努力を促すことは間違っているのでしょうか。
発達性ディスレクシアがない子どもでも、漢字を覚えるときは繰り返し練習をします。「発達性ディスレクシアがあっても、人よりもたくさん練習すればできるようになる」と考え、努力を促すことは間違っているのでしょうか。" 発達性ディスレクシアであるから読み書きに困難を抱えているのに、「もっと頑張りなさい」「もっと努力しなさい」とあたかも原因が本人にあるかのように子どもを追い詰めれば、子どもは読み書きどころか、学びそのものから遠ざかってしまうかもしれません。大切なのは読み書きを嫌いにさせないことです。文字は学習全てに繋がる学ぶためのツールです。「ツールがうまく使えなければ、学べない」かの様に責められてばかりでは、子どもたちは学びそのものをあきらめてしまいます。多くの子どもたちと同じ方法では学びにくいのだということを周囲の大人は認識して対応する必要があります。「たくさん書けば覚える」は、発達性ディスレクシアの子どもたちには当てはまりません。その子が無理なく勉強できる方法や量を一緒に考え、学びたいという気持ちを支え続けることが大切です。周囲に追い詰められず、「できた!嬉しい!」を積み重ねられれば、ペースはゆっくりでも、みんなそれぞれに着実にできるようになります。周囲の大人に見守られ、支えられている子どもは、もっと読みたい、書きたい、知りたいと自ら願う力を培っていきます。守るべきことは、「子どもたちの学びたいという意欲」であることを忘れないでいただきたいと思います。 保護者の方には、読み書きが他のみんなのようにできないことで、一番不安に思っているのは子ども自身だということを忘れないでいて欲しいのです。「ちゃんとやらないと大人になって困る」「そんな漢字も書けないんじゃ将来どうするの」などということばを投げかけ、無理矢理勉強をさせようとする前に、お子さんの「ぼくだって、私だって、できることならやりたいんだ」という思いに寄り添っていただきたいです。その子がやりたくない理由が必ずあります。学校や家庭で勉強する際に、どんなことに困っているのか、丁寧に聞いてあげてほしいと思います。そうして、子どもがどうしたいか、どうしたらできるようになるかを一緒に考えてあげていただきたいです。子どもは、決して怠けているのではありません。すでに十分すぎるほど頑張っているのですから。
発達性ディスレクシアがある子どもとその家族の支援を続けるNPO法人バオバブの樹では、障害がある子どもの保護者の方たちがネットワークをつくり、情報交換をしたり、勉強会をしたりしながら、さらにママスタッフとして活動へ参画もしています。第3回では、ママスタッフの方々にもお話をうかがいます。