こんなときは?保護者のかたへのアドバイス

生活 パニックは事前の回避を心がける

自閉症スペクトラムの傾向のある子どもの中には、特定の状況下でパニックになりやすい子どもがいます。パニックを起こすことは、子ども本人にとってもつらいことです。パニックを引き起こす状況などを把握して回避することが最善の対応です。

榊原洋一先生
教える人
お茶の水女子大学副学長、ベネッセ教育総合研究所顧問、CRN所長 榊原洋一先生
医学博士。東京大学医学部卒 小児科医。お茶の水女子大学副学長。ベネッセ教育総合研究所顧問。「子ども学」の研究のため(株)ベネッセコーポレーションの支援のもと設立されたCRN(チャイルド・リサーチ・ネット)所長。日本子ども学会副理事長。専門は小児神経学、発達神経学、特に注意欠陥多動性障害、アスペルガー症候群などの発達障害の臨床と脳科学。主な著書:「多動性障害児」(講談社+α新書)、「アスペルガー症候群と学習障害」(講談社+α新書)、「ADHDの医学」(学研)など。
パニックを起こす子ども自身が一番つらい

パニックを引き起こす原因は子どもによって異なりますが、感覚過敏にかかわる原因(例:触られることが嫌いなのに触られる)、特有のこだわりにかかわる原因(例:続けたい活動の中断を求められる)、興奮した気持ちのコントロールが出来ないことにかかわる原因、体調不良にかかわる原因、などがあります。パニックの現れ方もさまざまで、大声で泣き叫ぶ、その場から走り去るなどのほか、自分の頭を壁に打ちつける、腕をかむなどの自傷行為をすることもあります。思春期になると、自分を理解してくれない他者に攻撃的になることもあります。

パニックは子どもが故意に起こすものではなく、耐えきれない苦しみを感じて自身をコントロールできなくなって引き起こされてしまうものであり、子ども自身が一番つらい思いをするものです。パニックを繰り返していると子どもの精神状態は不安定になり、パニックを起こしやすい悪循環となります。パニックへの対応は、「パニックが起きたら対処をする」のではなく、「パニックが起こる状況を見極め、そのような状況を前もって避ける(回避する)という意識で考えることが大切です。

パニックへの対応のポイント

パニックへの対応のポイント 1:パニックを引き起こしやすい状況を避ける その子どもがどのような場面や状況でパニックになりやすいのかを、まずはよく観察します。大きな音や声がする場所が苦手な子どもであれば、そうした場所は避けたりヘッドフォンなどをして音を聞こえにくくしたりするなどの工夫ができます。予定や場所の変更などが苦手な子どもの場合には極力変更は避け、どうしても変更が必要な場合には、あらかじめ子どもに説明をしておくなどの対処をします。

パニックへの対応のポイント 2:子どもが自分で回避策を周囲に伝えられるようにする 子どもが成長して自分の苦手なことを客観的に理解できるようになったら、それを周囲の人に自分で伝えられるようになるとパニックの回避につながります。大きな音が聞こえる教室で「音を小さくして」と伝えたり、「少し教室の外に出てよいか」とお願いしたりすれば対応してもらえると分かれば、子どもは自分の意思を周囲に伝えられるようになり、パニックになりそうな状況を避けることが出来ます。周囲の人にはあらかじめ説明し、協力をお願いしておくことが大切です。

3:パニックが現れた際には静観し見守る もしパニックが起きてしまった場合は、本人を刺激しないように静かに見守ることが基本です。パニックは、数分から20分程度でおさまります。刺激にならないよう、周囲に人がいる場合は別の場所に移動したり、危険物がある場合は遠ざけたりします。頭を壁に打ちつけるなどの自傷行為が見られる場合は、頭と壁の間にクッションや大人の手を挟み、子どもの頭を衝撃から守りながら黙って見守ります。子どもの体を押さえこんで静止することは、本人の刺激になり逆効果になりますので控えてください。パニックがおさまったら「自分で落ち着けたけね。えらいね」と子どもをほめてあげてください。