公益財団法人ベネッセこども基金

助成団体紹介

2020活動報告|ファンドレイジング確立のための基盤整備

特定非営利活動法人 ユースコミュニティー(東京都)

経済的困難を抱える子どもの学び支援

1年目の助成期間を終え、活動の成果をご報告いただきました。
事業の詳細は以下からご覧ください。

2021年度事業紹介|地域の力を総動員して取り組む学習支援




ファンドレイジング確立のための基盤整備

ファンドレイジングの目的 ファンドレイジングの取り組みについて ファンドレイジングの取り組み結果 1年間の総括と2年目に向けて

ファンドレイジングの目的

「ユースコミュニティー」は東京都大田区で主に子どもの学習支援と居場所づくりを行っている団体です。
NPOにとって活動を継続させるためには、安定した収入(活動資金)を得ていくことが必要です。私たちの団体は設立以来、委託費や事業収入を中心とする、いわゆる事業型のNPOとして活動してきました。加えて活動を支える企業等からの助成金も大きな役割を果たしています。しかしながら、委託費や助成金はその性質上、使用用途に制約があり、事案によって使用できないことも少なくありません(例、子どもや家庭への食材、文具等の直接給付、および非常時の現金の貸付や提供等)。

一般にNPOのミッションを実現するためには、5つの財源(①委託費②事業費③助成金④寄付⑤会費収入)がバランスよくあることが望ましいと言われています。しかしながら、私たちは④寄付と⑤会費収入がほとんどない状態でした。

これまでに、子ども達のきめ細かい支援やより困難な事例に対応するため、新たな資金調達の仕組み(ファンドレイジングの仕組み)をつくることを総会や事務局内部でも確認していたものの、どこから手を付ければ良いか分からず、また日々の業務に忙殺され後回しになり、ほとんど手つかずの状態が続いていました。

そんな中、助成事業に採択されたことを契機に、団体のミッションである「支援者(仲間)を増やして社会課題に挑戦する」こと、そして「地域の課題は地域で解決する」という原点にまずは立ち返って取り組みをはじめました。
地域の諸課題を解決していくためには、NPO単独では限界があります。そこで私たちの活動を情報発信し、地域に問題と現状を知らせ、様々な方からの協力を得ていくことがますます重要です。
地元に住んでいる住民、活動している企業・団体の方に、子ども達の状況を知ってもらうことで、地域で起こっている課題の理解とそれを支える協力者になってもらい、そこからいただく気持ち(寄付等)をより困難で複雑なケースの支援に繋げていくことが今回のファンドレイジングの目的です。

ファンドレイジングの取り組みについて

年度初めの4月から、臨時休校や緊急事態宣言の発令など、私たちの活動も大きな影響を受けました。そんな中、4月に見切り発車ではありましたが、「コロナ禍の子ども達を支援する」ためのクラウドファンディングを取り組みました。
全てが初めての経験の中、目標の8割を達成し、食材を購入。保護者への生活相談(ソーシャルワーク)の際に食材を配布しました。
そして、事態が落ち着いてきた6月から、本格的なファンドレイジング(マンスリーサポーターの獲得)の準備を開始しました。大手NGOに従事している准ファンドレイザー監修のもと、団体職員に加え、教室現場で子ども達の学習を支援している大学生ボランティアにも参加を呼びかけました。
結果、5名の大学生がインターンとして参加。プロジェクトチームを結成し、7月と8月を準備期間、9月と10月を実施期間。11月と12月を支援者へのフォローアップと振り返り期間として取り組みました。

プロジェクト会議では、「なぜ寄付を集めるのか?」のワークショップを皮切りに、ステークホルダーピラミッドの作成、ターゲティングする層のペルソナマーケティング、募集サイトの方向性などの分析を毎週行いました。会議を重ねる中で取り組むアクションを確認。SNSを活用したサイトへのアクセス誘導、募集サイトのおよび簡単な動画作成、既存のボランティアスタッフへの協力要請(シェア祭り)、オンライン学習会(団体の活動報告会)の開催等を実施することを決定しました。 PJに参加した大学生たちには、それぞれの強みを生かした担当制を導入しました。

SNSの運用については、現役大学生の方が詳しいこともあり、あらたにインスタやTwitterを活用、比較的スムーズなスタートができるかに見えましたが、匿名性が強い類のSNSでは、ネガティブな反応など、運用の難しさも経験することになりました。

支援を集めるためには、「貧困」などのワードや子どもの個別事例報告など、センシティブな内容に触れた方が関心を引きやすい一方、現在あるいは過去に私たちの団体を利用している(していた)子ども達や保護者の自尊感情を傷つけるのではないか?という議論が団体内で巻き起こりました。困窮家庭の子ども支援団体特有の広報のデリケートな部分と難しい面も経験しました。

また、地域学習会については、コロナ禍の情勢を踏まえ、2回ともオンライン開催に変更して開催しました。団体として今までオンラインでの開催経験が無かったため、事前にリハーサルや役割(司会、ホスト、プレゼン、小グループの座長)などを入念に準備しました。
反省点としては、約45分の成果報告の後、休憩をはさんで再開後、小グループに分かれてディスカッションする流れでしたが、初対面の人とディスカッションするのはハードルが高かったのか、休憩中に多くの参加者が離脱してしまいました。
そこで2回目の学習会ではこの点を改善し、休憩前に小グループに分け、参加者の自己紹介を一通りしてから休憩に入り、再開という形をとりました。結果、途中離脱者はゼロになりました。参加者のアンケートは、ほとんどが高評価で「時間があっという間で、もっと話したかった」という声が多く寄せられました。

ZOOMを使用して開催したオンライン学習会
新たに立ち上げたインスタグラム

ファンドレイジングの取り組み結果

募集サイトアクセス803PV、マンスリー新規会員7名、オンライン学習会に39名が参加してくれました。
そして今回のプロジェクトの取り組みがきっかけになり、団体内で広報委員会を設置し、定期的な会議と対外的な情報発信を継続しています。こうした地道な取り組みのもと、今年度は団体設立以来、最大の寄付収入を得ることができました。
また金銭的な寄付以外にも、食材、文具、教材、マスクなどの物品寄贈の申し出も地域から寄せられました。私たちの団体だけでは配りきれないものについては、地域の子ども支援団体と連携して配布するなど、地域の協力体制も一層進みました。

1年間の総括と2年目に向けて

振り返りを含め、約半年にわたって展開してきたマンスリーサポーター獲得プロジェクトは、コロナ禍という難しい情勢の中、上記の成果をもたらすことができました。
オンラインイベントやメール、SNSを通じた寄付の呼びかけで中心的な役割を担ったのはインターンの大学生達です。これまで事業型の運営だった私たちユースコミュニティーが、地域からの支援を得ていくための行動変容にチャレンジしたことは、財源の安定化に向けた大きな「最初の一歩」だったと思います。
やり方によっては、この一歩をもう少し大きくすることもできたかもしれません。しかし成果主義よりも、団体メンバーの意見を尊重してみんなで考え、みんなで取り組む姿勢が、私たちユースコミュニティーのスタイルだと思っています。 ユースコミュニティーの活動に関わっている全員一人ひとりにとって居心地のいい場所であり、巣立った子ども達が、今度は支える側としてボランティアとして帰ってくるように、今回のインターン生やおよそ120名所属しているボランティアが、今以上に活動を「有意義で、しかも楽しい」と感じ、子どもの貧困に取り組むアクターで居てくれたらと、願ってやみません。そしてそれは、この先の100歩、200歩をより大きなものに変えていくと信じています。

プロジェクト期間中には、ファンドレイジングに関する内容だけにとどまらず、広く地域や行政との関わりについて触れる機会を積極的に取りました。普段から困難を抱える子どもの支援をしている私たちですが、そのことがかえって一面的な考えやものの見方になってしまっているのではないか?という危惧があったことや、実情を外部にどう伝え、さらに外部と協力するプロセスを実感することが、今回のプロジェクト成功にに必要不可欠だと考えたからです。
そこで、普段付き合いのある子ども食堂への訪問・懇談、地元議員へのヒアリング、さらには私たちの教室全てに足を運び、ボランティアスタッフにプロジェクトの広報面の協力の訴えをしました。

今回、ファンドレイジングプロジェクトを通じ、あらためて団体の理念やこれまでの活動を振り返るよい機会になりました。特に痛感させられたことは、今まで事業化の側面ばかりに重きを置いて活動してきましたが、広く一般に支持を得ていくためには、団体の存在意義をきちんと内外に示すことが重要だということです。そのためには、私たちNPOのミッションの共有を団体内部からしっかりと浸透させていくことがまずは肝心です。
次年度は元ボランティアスタッフを中心にしたアルムナイ制度の確立や、定期的な報告会や学習交流会を積極的に開催していきます。

コロナ禍における困窮家庭の子ども達の状況について地元議員に報告
マンスリー会員になっていただいた方に送付したお礼メッセージ動画の一コマ
各教室のボランティアに、支援者獲得の意義と広報への協力をお願い

特定非営利活動法人 ユースコミュニティー

代表

濱住 邦彦さん

2012年任意団体ユースコミュニティーを設立。2014年にNPO法人化。代表理事に就任 2016年5月より団体の専従を務める 表彰:住友生命「未来を強くする子育てプロジェクト」未来賞。行政の委員歴:2014~15年大田区青少年問題協議会委員、2016年より大田区子どもの貧困対策に関する計画検討委員(大田区子どもの生活応援プラン推進委員)として活動。



【助成先訪問】地域の力を総動員 経済的困難な子どもに学習支援

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