公益財団法人ベネッセこども基金

コラム

防犯 「みんなで守ろう!子どもの安全!」を広げるために

子どもの安心・安全を守る活動

専門家コラム:防犯編VOL.73
担当:安全インストラクター 武田信彦



時代に合った活動で、地域の防犯力をますます元気に!

今年もコラムをお読みいただき、ありがとうございました。
この一年も新型コロナウィルスの影響を大きく受けました。対面での仕事が多い私の場合、感染が拡大するたびに、講師依頼をいただいた企画が中止になるケースがくり返されました。一方で、オンラインでの講演や研修は昨年以上に増加しました。また夏頃からは、感染防止対策を行った上での対面実施も回復傾向にあります。


「3年ぶりの開催」。地域の防犯活動も積極的にできない中、各地での研修やイベント等も開催されず、防犯意識が低下するのではないかという懸念がありました。さらに、これまで地域の防犯活動をサポートしてこられた、自治体や警察等の担当者が異動のタイミングを迎える時期でもあります。しかし、実際に各地へ赴いてみると、子どもの防犯対策や地域の安全・安心への関心は依然として高く、地域住民・自治体・警察等との協働・連携も引き続き熱心に取り組まれていることがわかり、正直ホッとしました。


一方、保護者世代を中心に、防犯活動への負担感や不要論などもちらほら聞こえてきます。とくにPTAでは、長期に及ぶ活動休止、役員交代など、バトンを受け継ぎにくい状況が続いているようです。子どもたちを守るための防犯活動の意義や効果、可能性について、あらためて確認いただく機会が大切だと感じています。コラム71「子ども110番の家」が必要な理由でも説明しているとおり、見守り・助け合いの環境は、ますます必要になっているからです。私も、負担感を軽減した活動しやすいスタイルやデザインを模索し、時代に合わせた防犯活動の提案を行っていきたいと思います。

世代や立場を超え、「みんな」が集って考える、子どもの防犯対策

さて、今回のコラムのタイトルである「みんなで守ろう!子どもの安全!」は、私が助言を務めた、警察庁「犯罪被害等防止マニュアル・子ども編」のタイトルです(警察庁のリーフレットでは「子供」と表記)。私が専門とする市民防犯の視点からさまざまな助言をさせていただきましたが、タイトルについても私が提案した言葉を反映していただきました。防犯対策を、子どもや保護者だけに押し付けず、「みんな」で考えて取り組む環境づくりの大切さを表しています。


 先日、横浜市内の小学校PTAからご依頼いただき、親子参加の防犯セミナーを行いました。親子をはじめ、学童クラブの職員の方々や、校長先生も参加されました。子どもたちだけが参加する防犯セミナーは多数実施していますが、保護者や先生など、子どもたちの身近にいる大人の方々に一緒に参加いただくことは、防犯力を高めるうえでより効果的だと感じています。


 さらに、地域の防犯ボランティアの方々にも参加していただき、研修を兼ねた防犯セミナーにすると、さらに効果はパワーアップします。コラム66「子ども、保護者、地域。みんなで参加する防犯講座」で紹介している、草加市主催「ぼうはんパワーアップ講座」は、その好例と言えます。保護者・子ども・防犯ボランティアのみなさまが参加し、子どもたちの防犯対策のあり方や、具体的な防犯力向上の練習を楽しく行うことができました。世代を超えた連携の重要性、見守り・助け合いの環境づくりを確認する場として、これからの防犯研修のひとつのあり方だと思っています。

 おかげさまで、来年へむけても各地からお声がけをいただいております。多様な担い手による、多様な防犯活動を推進することでの防犯力向上。そして、世代を超えた交流の場をとおして、「みんなで守ろう!子どもの安全!」の雰囲気や環境づくりを広げていくことが何より重要だと考えています。「自分たちを守ってくれる=頼れる大人たち」の姿や行動、想いや願いは、子どもたちの心へ大きな影響を与えるものだからです。子どもの防犯対策は、未来を担う子どもたちへ、大人たちが「人を見守り、お互いを助け合うことは大切!」というメッセージを伝える機会でもあるのです。

うさぎママのパトロール教室

うさぎママのパトロール教室主宰
安全インストラクター

武田 信彦 さん

犯罪防止NPOでの活動を経て、2006年より安全インストラクターとして活動を開始。「市民防犯」のパイオニアとして全国で講演やセミナーなど多数実施中。子どもたちを対象とした「安全ワークショップ」も好評を得ている。
著書には「SELF DEFENSE 「逃げるが勝ち」が身を守る」(講談社)ほかがある。



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