公益財団法人ベネッセこども基金

コラム

防犯 警察と地域住民は、治安維持のパートナー

子どもの安心・安全を守る活動

専門家コラム:防犯編VOL.72
担当:安全インストラクター 武田信彦



官民が協働・連携する際のコツ

紅葉が美しい季節となりました。秋は、全国的に防犯の機運が高まる季節でもあります。10月11日が「安全・安心なまちづくりの日」と制定されており、10月11日から20日までの期間は「全国地域安全運動」が展開されます。その期間の前後には多くの防犯に関する企画も開催されます。私も各地を巡り、市民防犯の視点からメッセージを届けてまいりました。

さて、関東管区警察学校では、昨年に引き続き専科教養の講師を務めました。関東のみならず、全国の警察本部で防犯を担当する警察官が対象です。


警察が取り組む防犯と、一般市民が取り組める防犯の違いについてや、「治安維持のパートナー」として協働・連携する際のコツや注意点についてなど、わかりやすく解説してきました。官民が協働・連携を行うためには、お互いの領域の範囲、できること・できないことを正確に把握することが重要です。


また、パートナーとしての位置づけは「フェアな関係性」のもとに築かれるもの。地域住民との付き合い方、距離感、そして、推進・支援のあり方についても市民防犯の視点からコツやヒントをお伝えしました。

地域の防犯力の強化や向上が課題に

現在の防犯分野における全国的なテーマとしては、「地域の防犯力の強化や向上」が挙げられます。いわゆる「防犯ボランティア」の団体数やメンバー数が頭打ちとなり、年々緩やかに減少傾向にあるからです。各地で活躍されているみなさまの高齢化や、新たな担い手が増えない...など、治安維持のパートナーとして協働・連携、支援を行う警察や自治体等にとっても課題となりつつあるのです。


 私自身も、栃木県におけるワーキンググループでの座長をはじめ、各地での講演や研修会の多くで、「地域の防犯力の強化や向上」のテーマと向き合い、提言や助言も行っています。学生、PTA、事業者など多様な担い手による多様な防犯活動の推進や、世代を超えた見守り・助け合いの雰囲気づくりなど、できることはまだまだあります。とくに重要なのは、これまで地域防犯にかかわったことがない人たちへの「きっかけづくり」だと思います。それぞれのライフスタイルに合わせた柔軟な活動スタイルの提案も欠かせません


ライフスタイルに合わせた防犯活動を

 また、防犯ボランティアの統計上のデータについて、現状では「平均して月1回以上の活動実績のある団体であり、かつ、構成員数が5人以上の団体」という基準が設けられています。一方、「ながら見守り」と呼ばれるような、個人がそのライフスタイルに合わせて行う防犯活動も推奨されはじめています。少人数かつ不定期で行われる活動スタイルも広がっているのです。今後、防犯にかかわる人たちの統計の取り方についても見直すことが必要になるのかもしれません。

 いずれにせよ、警察と地域住民との「治安維持のパートナー」のあり方も新しい段階に入りつつあると思われます。時代や社会の変化に柔軟に対応し、人々のライフスタイルに合わせながら見守り・助け合いの環境づくりを広げる必要があるのです。

うさぎママのパトロール教室

うさぎママのパトロール教室主宰
安全インストラクター

武田 信彦 さん

犯罪防止NPOでの活動を経て、2006年より安全インストラクターとして活動を開始。「市民防犯」のパイオニアとして全国で講演やセミナーなど多数実施中。子どもたちを対象とした「安全ワークショップ」も好評を得ている。
著書には「SELF DEFENSE 「逃げるが勝ち」が身を守る」(講談社)ほかがある。



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