公益財団法人ベネッセこども基金

コラム

ネット 子どもの命を守るために

子どもの安心・安全を守る活動

専門家コラム:ネット編VOL.20 担当:石川 千明


コロナ禍でのオンライントラブル

コロナ禍で大人も子どももインターネットの長時間利用が顕著になっています。
KDDI株式会社の調査では、コロナ禍でスマートフォン利用時間が増加し、ゲーム障害、ネット依存傾向の割合は1.5倍以上増加したそうです。※1


学校や保護者からの相談では、

  • 子どもがオンラインゲームを止められない
  • SNSやゲームに夢中になって昼夜逆転して不登校傾向
  • オンラインゲームで知らない人とつながり、SNSで連絡をとっていた
  • オンラインゲームでの課金トラブル、仲間はずしなどの友人間でのトラブル

など、SNSやゲームに関係が多くありました。楽しくネットをしているその先にはいろいろな弊害がでてくるようです。



コロナ禍で始まったGIGAスクール

2021年は日本中のほとんどの小中学校でGIGAスクールが始まったのではないでしょうか?

コロナ禍でのオンライン授業開始は非常に有効であったと感じています。
しかし大きくニュースにもなったGIGAスクール端末でのいじめ問題では被害者の児童が自殺に追い込まれてしまいました。

GIGAスクールで日常的にネットを使うようになったこと、またスマホの所持年齢が下がったことなどから、情報モラル教育を低年齢から開始したいと感じている学校も多いようですが、コロナ禍での集合研修ができないことや、現状のトラブルに合った情報モラル教育が難しいことなど、子どもたちへの情報モラル教育が足踏みをしているようです。では安全に使うために子どもたちへ何を伝えれば良いのでしょうか。



『使う』と『安全に使う』ことは違うということ

デジタルネイティブ世代(生まれた時からインターネットがある世代)の彼らはデジタルデバイスを渡すと私たち大人と違い直感で操作できるようです。でもそれはあくまでも『使えている』だけで『安全に使っている』とは違います。『安全に使う』ということは、下記のようなことを意識できているかということと考えています。



『安全に使う』ということは

① 人権意識をもって使う
インターネットには年齢も性別も考え方も自分とは違う人がたくさんいます。自分勝手な発言をすると人を傷つけたり、自分が傷ついたりすることもあります。その発言を聞いて人がどんな気持ちになるか想像力を働かせる必要があります。
② マナーや法律を守って使う
写真や記事の投稿や電子機器を利用するとき、それがマナー違反や法律違反になっていないかよく確認し考えることが必要です。自分の情報は友だちしか見ていないと思うのは間違いです。 友だち限定の記事がスクリーンショット(画面コピー)されて拡がってしまうことがあります。投稿の際は一歩立ち止まってよく確認する必要があります。
③ 相談先を知っている
ネットトラブルは特にスピードが速いです。そして大人から見えないSNSで起きることが多いです。困った時にすぐに相談できる大人が周囲にいて、保護者や先生が子どものSOSをキャッチできる人になってほしいと考えています。子どもの相談先になれるよう、声かけも重要です。


大人が相談できる場所になるために

自殺に追い込まれる人は誰にも相談できていないということを耳にします。
子どもの場合は、保護者には自分のことで悲しい気持ちにさせてはいけないと考えるようです。良い子であればあるほどその傾向は高くなります。
追い詰められていると他に良いアイデアが出ず、そのまま消えてしまいたいという思いに囚われてしまうこともあります。
日頃から子どもが相談しやすい場所になるための声かけを紹介します。


① 困ったら相談してね(自分は相談できる先であることを伝える)
② 知ってる人を知ってるから大丈夫(大人は大人の関係で専門家を探してくることができる)
③ 暴走しないよ(傾聴し勝手に暴走しないという約束)


簡単な声かけですが、何かあったときに最初に相談する場所になるために大変有効です。



子どもが自ら命を絶たないために

令和2年度の小中高生の自殺者数は過去最多の499人です。(※2 補表3-1 職業別自殺者数より)
国立成育医療研究センターの調査(※3)では、小4から高3の4人に1人が「死にたい」と、考えていたそうです。
非専門家向けに作成された「TALKの原則」と呼ばれる自殺対策の原則があります(カナダの自殺予防のグループが作成)TALKの原則について文科省のガイドブック(※4)から引用します。


子どもから「死にたい」と訴えられたり、自殺の危険の高まった子どもに出会ったとき、教師自身が不安になったり、その気持ちを否定したくなって、「大丈夫、頑張れば元気になる」などと安易に励ましたり、「死ぬなんて馬鹿なことを考えるな」などと叱ったりしがちです。

しかし、それでは、せっかく開き始めた心が閉ざされてしまいます。自殺の危険が高まった子どもへの対応においては、次のようなTALKの原則が求められます。(文部科学省『教師が知っておきたい「子どもの自殺予防」』より)



■TALKの原則 

(1)Tell
言葉に出して心配していることを伝える。
(2)Ask
「死にたい」という気持ちについて、率直に尋ねる。
(3)Listen
絶望的な気持ちを傾聴する。
(4)Keep safe
安全を確保する。





もし子どもが悩みを打ち明けてくれたときはいきなり叱らず、慌てず、まずはしっかり話を聞きましょう(傾聴)。
その上で解決できない場合は、子どもの安全を確保した上で専門家を探しましょう。
まずは身近な人(保護者や先生)が一番の相談の場所になることが大切です。なぜならネットトラブルで一番に相談するのは「ネットの友だち」と子どもたちが言うからです。
どんな人かわからない人に相談することで犯罪に巻き込まれたり、最悪の場合は命に係わる危険性に遭うかもしれません。
子どもたちは私たちに対して的確な答えを求めているわけではなく、自分にとことん向き合ってくれる頼れる大人を探しています。



※1 KDDI株式会社 コロナ禍で変化するスマートフォンの利用方法と、スマホ依存などへの影響を調査



※2 厚生労働省 警察庁 令和2年中における自殺の状況



※3 国立成育医療研究センター「コロナ×こどもアンケート 第4回調査報告」



※4 文部科学省「教師が知っておきたい子どもの自殺予防」のマニュアル





石川千明公式サイト

NPO法人 奈良地域の学び推進機構・理事、京都府警察 ネット安心アドバイザー

石川 千明さん

(株)カプコンでゲーム企画を担当。 退職後web企画制作、コンサルタントとして活動。'01年~子育て支援グループいこま育児ネット設立、'08年~自治体、学校等でICT支援活動を開始。それらの経験また母親目線から、わかりやすくネットトラブルの現状と対策を解説する。生駒市人権審議委員、森のムッレ教室リーダー、防災士など多方面で活動中。

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