公益財団法人ベネッセこども基金

コラム

防犯 ゆるやかな連携で守る、子どもの安全

子どもの安心・安全を守る活動

 

安全インストラクター武田信彦のコラム
「一般市民による防犯とは?」(第40回)

 

 先日、文部科学省が主催する安全教育のシンポジウムにて登壇しました。私は、市民防犯の考え方や各世代にむけた安全教育プログラムなどを紹介。その後、専門家や関係機関の担当者によるパネルディスカッションにも参加しました。テーマは、「地域の連携による子どもの安全対策」。とても大切な考え方です。私が生まれたドイツなどの欧米社会では、「安全は個人の自己責任」という認識が強く、「子どもは保護者が守るべき」というのがスタンダードな防犯の考え方。一方の日本では、自己責任を個人だけに押し付けずに、「みんなで守ろう、地域の子」という考え方の中で対策が取り組まれています。日本の社会が育んできた「地域育ち」といえるような文化や習慣とも言えますが、一方で、子どもだけで過ごすことが多くなっているという側面も生み出しています。

 

 いま、警察や自治体、教育委員会などの関係機関、そして地域のボランティアのみなさんによってさまざまな防犯対策が進められています。地域によって取り組み方に工夫や特徴があり、それぞれの地域特性を反映しているといえるでしょう。 ところで、「みんなで守ろう」の取り組みを進める中で、忘れてはいけないことがあります。それは、保護者のみなさまとの連携や情報共有です。「子どもたちの安全対策のために何ができるのか」「地域ではどのような取り組みをしているのか」「保護者にできることはあるのか」など、子どもを守り、子どもたちの身を守る力を引き出すことができる保護者のみなさまに対しても、しっかり伝えていくことが重要です。さらに、小学校入学前の段階で共有することができれば、安全対策の準備や心構えなども整うと同時に、安心感も増すのではないかと思います。

 

  地域の中で連携をとっていくためには、それぞれの「できること」「できないこと」を理解し、得意技を発揮できる環境作りが欠かせません。 今回のシンポジウムでは、各都道府県教育委員会のみなさまが、積極的に情報交換をされていたのが印象的でした。「正解」がないテーマだからこそ、知恵とアイディアを集めて一歩一歩地域に合わせた実践を行うことが重要なのだと感じました。

40回画像

うさぎママのパトロール教室

うさぎママのパトロール教室主宰
安全インストラクター

武田 信彦さん

犯罪防止NPOでの活動を経て、2006年より安全インストラクターとして活動を開始。「市民防犯」のパイオニアとして全国で講演やセミナーなど多数実施中。 子どもたちを対象とした「安全ワークショップ」も好評を得ている。
著書には「SELF DEFENSE 「逃げるが勝ち」が身を守る」(講談社)ほかがある。

SNSでこの記事をシェアする

一覧に戻る