公益財団法人ベネッセこども基金

コラム

防犯 「一般市民ができる防犯」と「犯罪抑止」

子どもの安心・安全を守る活動

 

安全インストラクター武田信彦のコラム
「一般市民による防犯とは?」(第25回)

 

 全国各地で講演を行った際に、自治体や警察の担当者による、事業説明や犯罪情勢の講話に触れる機会が多くあります。お話の中で、「不審者」「事案」など、もともと警察等の専門用語が一般化されて使用されることが増えました。「犯罪抑止」という用語もよく耳にします。この言葉は、「防犯」というニュアンスとは異なり、「犯罪を止める」イメージを強く感じられるのではないでしょうか。言葉はときに活動を形作ることがあるので、慎重に選ばなければいけないと思います。一般市民が行う防犯ボランティアは、犯罪抑止の役割を持たないからです。

 犯罪抑止には、犯罪を止める力の行使を含みます。警察が行う捜査や職務質問、取締りなどによって防ぐことを直接的な防犯だとしたら、我々一般市民が行えることは、「犯罪が起きにくい地域づくり」といった間接的な防犯といえるものです。非行や犯罪と直接向き合って戦うようなものではありませんし、行う権限もありません。自治体や警察からの「犯罪抑止効果を期待している...」といった発言を受け止めた人の中には、「特別な力を使える...?」と勘違いする人もいるかもしれません。それは、防犯活動自体のリスクを高め、権利やプライバシーを侵害するリスクをも生み出してしまいます。「警察のお墨付きがほしい」という声もときどき耳にしますが、市民活動の範囲では不要です。地域のみなさんや子どもたちに目を向けて、笑顔やあいさつによって「犯罪が起きにくい雰囲気をつくる」。それこそが、一般市民として最大限に防犯効果を広めることができる取り組み方です。

 

コラム2も参照ください。

うさぎママのパトロール教室

うさぎママのパトロール教室主宰
安全インストラクター

武田 信彦さん

 

犯罪防止NPOでの活動を経て、2006年より安全インストラクターとして活動を開始。「市民防犯」のパイオニアとして全国で講演やセミナーなど多数実施中。 子どもたちを対象とした「安全ワークショップ」も好評を得ている。
著書には「SELF DEFENSE 「逃げるが勝ち」が身を守る」(講談社)ほかがある。

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