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2020/02/17 (月)

「楽々かあさん」大場美鈴様へのインタビュー

「おうちのかたは自分のことをわかってくれている」という大きな安心感を、子供にたくさん与えてあげてください。

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母親の目線で、発達障害やグレーゾーンのお子さまの支援を考える 「楽々かあさん」としてご活躍の、大場美鈴様。

ご自身も発達障害・グレーゾーンの3人の子をもつお母様であり、同じ立場のおうちのかたへ積極的に発信も行っている大場美鈴様にお話をうかがいました。


Q1. Facebookなどで管理人「楽々かあさん」として、育児のかたわら、発達障害やグレーゾーンのお子さまのおうちのかたを支援している大場様。このような活動をされるきっかけはどのようなものだったのでしょうか。

きっかけは、長男が小学校1年生の時です。ランドセルの中身が空っぽで帰ってきたり、漢字学習が始まると宿題を嫌がったりすることがあり、調べてみたら発達障害だということがわかったのです。そのうち、漢字学習が嫌で国語が嫌になり、勉強が嫌になってしまいました。

はじめはそんな息子への接し方が分からなかったのですが、発達障害だということが分かると、書籍を読んだり、カウンセリングを受けたり自分で情報を集めました。そのなかで、徐々に、うちの子にあう接し方というものがわかってきた感じです。

うちの長男は通常学級にいるのですが、通常学級にいる発達障害・グレーゾーンの子に関する現実的で具体的な情報というのは、実はとても不足しているように思ったんです。宿題のとりくみ方、お友達との付き合い方などを親が家庭で教えていくために、具体的に参考になる情報がなかなかなかった。そこで、リアルタイムで情報を発信できたらと思いました。子どもはすぐ成長するので、同じ立場のおうちのかたへできるだけタイムリーなアイデアなどをお伝えしたいと思って、自分から発信していきました。

Q2.著書「発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母の毎日ラクラク笑顔になる108の子育て法」を拝読しました。大場様は「できたところに目を向けてほめる」という姿勢でいらっしゃるそうですね。一人ひとり個性のちがうお子さまがそれぞれ安心できる環境をつくり出すまでには、難しいこともありませんでしたか?

私もはじめから積極的にほめるということができていたわけではありません。余裕があまりないうちは、子どものほめるところをなかなか見つけられませんでした。

たとえば勉強なら、「正しい姿勢で勉強してほしい!」「正しいえんぴつの持ち方で書いてほしい!」というように、今より要求が多くて、ほめるハードルが高かったですね。それが当たり前だと思っていたので。

けれども、発達障害では、今まで当たり前と思っていたことが、当たり前ではないことがあるんですね。子どもによっては、こちらが当たり前と思って要求することがとてもハードルが高いことがある。子供と接していくうちにそれがわかってきて、子どもに対する要求・ほめラインを、その子にあったところまで下げることができるようになりました。

たとえば漢字の書き取りの宿題では、青えんぴつで、なぞり用の下書きを書いてあげると、視線移動の負担を減らし、バランスを取りながら漢字を書くよう気をつけられます。よく書けている部分をスタンプで褒めれば、漢字学習がニガテな子供も徐々に宿題取り組めるようになっていき、子どもをしかる回数が減っていきました。

Q3.お子さまの将来もみすえて、お子さまとの上手な関わり方について、おうちのかたが気をつけると良いポイントがありましたら教えてください。

発達障害やグレーゾーンの子供は、まわりを見て動いたり、相手の表情を正確に読み取ることが難しいことがあります。ですので、おうちのかたが子供と接する時には、「お母さん、嬉しいな」「お母さん、それは嫌だな」と、自分の気持ちや感情を、その都度口に出すようにすると良いと思います。そうすると、「こういうことをすると、相手は嬉しいんだな、嫌なんだな」とわかり、人の気持ちの理解につながります。

また、わたしは、学校での出来事は否定せずに聞いてあげるようにしています。「嫌なことがあった」などと子供が言う日には、「そうかあ、嫌だったんだね」と、気持ちを受け止めたうえで、どのくらい嫌だったのかなどを、自作したスケールを見ながら一緒にふりかえります。長男はゲームが好きなので、ゲーム風に「ダメージ」や「回復」で気持ちを例えて、0%~100%で話し合っています。子供の親しみやすい方法で「気持ちの見える化」をしてあげると、子供も安心しますよ。

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それと、日ごろから十分に愛情を分かりやすく伝えることもとても大切にしています。周りの人に大事にされ、自分自身のことを好きと思えることや、大事にしてくれる人のために自分が何かしてあげたいという気持ちがうまれることがとても大事だと考えているからです。そういった気持ちが芽生えて、大人になったときに、自分の身に着けたスキルを周りの人たちのために使いたいと考えることのできる人になってほしいですね。

Q4.たくさんの楽しい支援ツールをWEBで紹介されていますが、とりわけおススメ(ご自身のお子さんにとくに役立ったものなど)なのはどんなものでしょうか?

電子レンジなど家電製品の使い方を、イラスト入りのカラフルなシートにして家電のそばにおいたものなどで「自分でできる」ことを増やすのに効果がありました。自分で見て確認して家電を使えるようになり、今では簡単な料理なら自分一人で作っています。カードを見忘れていれば、「何を見ればいいんだっけ?」と、気づかせる声かけなどはしますが、徐々にステップを踏めば自分でできるようになりました。現在、同様に作ったカードを見ながら、習い事やペットの世話などにも、挑戦しています。

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Q5.最後に、おうちのかたへのメッセージをお願いします。

発達障害やグレーゾーンの子供は、「当たり前」と言われるようなことを、すごくがんばって取り組んでいます。

そんな目の前の子供が一生懸命がんばっていることを、他人との比較ではなく、本人自身の成長をみとめて褒めてあげることが大事だと、私は考えています。

どうか、「おうちのかたは自分のことをわかってくれている」という大きな安心感を、子供にたくさん与えてあげてください。


◆大場 美鈴 (おおば・みすず) 楽々かあさん

1975年生まれ。うちの子専門家(専業主婦)。

美術系の大学を卒業後、出版社で医療雑誌の編集デザイナーとして勤務し退社。実父の介護とうつを経験後、結婚。3人の子宝に恵まれる。長男(小4)はASD+LD+ADHDで、通常学級在籍。次男(小2)、長女(年中)はいくつか凸凹特徴のあるグレーゾーン。2013年より、Facebookなどで管理人「楽々かあさん」として、育児の傍ら、発達障害育児に役立つ支援ツールの制作と、日々の子育てのアイデアをシェア・情報発信する個人活動を開始。

facebook:

https://www.facebook.com/ideatoolsnote

楽々かあさん公式HP:

http://www.rakurakumom.com

ブログ「頭痛のタネから芽が出る話」:

http://rakurakumom.blogspot.jp

「発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母の毎日ラクラク笑顔になる108の子育て法」:

http://www.amazon.co.jp/dp/4591147959

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保護者 親 家庭学習

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