『田内学 連載 ミライ中学 投資部!
第1話 「投資部ってどんな部活?」』

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アタマをきたえる
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#将来
2022.03.22
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新入生のみなさん、ご入学おめでとう。新しく通い始めた中学校には、顔なじみの友達もいれば、初めて知り合う友達もいるよね。進級した2年生や3年生にとっても、新しいクラスにどんな子がいるのかは一番気になるところ。
そして、部活もまた、学年を超えた仲間ができる出会いの場だ。在校生は、どうやって新入生を呼び込むか頭を悩ませているし、新入生もワクワクしながら、部活選びに迷っているだろうね。

ここ、ミライ中学は最先端のことを学べる少し変わった学校。入学したばかりの悠木アカリちゃんも、部活選びに悩む新入生の一人だ。

学校帰りに、部活の勧誘をしている先輩たちから受け取ったチラシの束。それを一枚一枚めくりながら、目を通していく。
「ダンス部も楽しそうだし、科学部で実験をするのもおもしろそう。和服を着て競技かるたをするのもあこがれちゃうなあ。」
あるチラシでアカリちゃんの目が止まる。
「こんな部活があるの!?お母さんも最近始めたばかりだし、ここにしよう!」

1ヶ月前からアカリちゃんのお母さんは"あること"にはまっていた。最近のお母さんはいつもその話ばかりしている。
「これからは、あなたの大学資金も増やさないといけないし、老後の資金も不安だし。生きていくためには、何かとお金が必要なのよ。投資をがんばって、お金を増やさなきゃ」
そう、お母さんが最近ハマっているのは"投資"。
投資の本をたくさん買って、勉強している。
投資にはいろいろあるらしいけど、お母さんが始めたのは、"株式投資"というものらしい。
お母さんの説明によると、"株"というチケットを安く買って、高く売ることができれば、お金を増やすことができるらしい。だから、価格がこれから上がりそうな株を探して買おうとしている。
アカリちゃんが、「最近、動物を育てるゲームがおもしろいんだよね。私のまわりの子はみんな遊んでいるよ」と言うと、「それって、XXっていう会社よね?そこの株、値上がりしそうね。100万円くらい株を買ってみようかしら」とお母さんが食いついてくる。
そして、パソコンに向かって、その会社のことを調べたり、株を買ったり売ったりしている。お母さんが楽しそうにやっている「投資」をしてみたいと思ったし、なによりも中学生なのに「投資」をするってかっこいい。アカリちゃんも、投資部に入ることにしたのだ。

さっそく、次の日の放課後、投資部の部室に行ってみることにした。ミライ中学は新しい学校だし、投資部というからには、最先端のパソコンが並んでいるに違いない。
そんなイメージを抱きながら、投資部の扉を開けてみると...

「失礼しまーす。あっ」

予想外の光景に、思わず叫んでしまった。部屋のなか、体育倉庫みたいな場所で、いろんな道具や材料が置かれている。パソコンなんて一台も置かれていない。それどころか、二人の人影が、ノコギリで板を切ってなにか作っていた。

「あ、ごめんなさい。投資部の部室と間違えました」
アカリちゃんが出て行こうとすると、ノコギリを持っていた黒ぶちメガネの男の子が手を止めて、返事をした。
「!!おいアカリ!待てよ!ここが投資部だよ」
「あれ、優斗君!」
めがねの男の子は、アカリちゃんの幼なじみの梶優斗君だった。彼のお母さんは近所では有名なそろばん教室を開いている。だけど、優斗くんはそろばんを使えない。理由を聞いたら、「え、電卓でいいじゃん」と開き直っていたことがある。
だけど、投資部の優斗くんが持っているのは、電卓ではなくてノコギリだった。


「おまえ、何部と勘違いしてんだよ」
「え?えっとー...大工部?」
「そんなもんねーよ。ここが投資部だよ!」

奥にいたもう一人の人影が口を開いた。
01_003.jpg 「悠木アカリさんね。ようこそ、投資部へ。私がこの部の顧問です。一緒に未来を作りましょう!」
そう呼びかけた女性は、体育倉庫みたいな場所とは不釣り合いの黒のスーツを身にまとっていた。
「キャ、、、いえ、英語の長谷川先生、でしたよね?」
「もう名前を覚えてくれてたのね、ありがとう。相手の名前を覚えるのがビジネスの基本だわ」
覚えるもなにも、長谷川先生は、アカリちゃんのクラスでは初日から有名人だった。最近テレビによく出ているニュースキャスターみたいに、ショートカットでビシッとしたスーツ姿だから、すでに"キャスター長谷川"というあだ名がついていた。アカリちゃんも、さっき、その名前で呼びそうになっていた。
「あ、はい。本当に投資部なんですか?投資って、パソコンとかでやるんじゃないんですか?」
「そうね、投資っていうとそういうイメージが強いわね。だけど、本当の投資ってそういうことじゃないの。未来のために働くってこと」
「未来のために働く??」
「そう。私たちが、未来のだれかのために働くの。そして、将来、だれかの役に立つことができたら、その投資は成功したと言えるわ」

先生はくわしく説明してくれた。

「投資」と聞くと、みんなはなにをイメージするだろう?
アカリちゃんのお母さんのように、パソコンやスマホのアプリから株や為替を取引する大人はたくさんいる。割安なものを買って、高く売ることができれば、お金が増える。ギャンブルみたいに思っている人も多いのではないだろうか。
だけど、本当の「投資」は、ギャンブルとは違う。

※為替・・・外国為替取引のこと。日本では円という通貨(お金)が使われているけど、外国にはいろんな通貨が存在する。アメリカだとドルだし、イギリスではポンド。フランスやドイツではユーロという通貨が使われている。野菜の価格が毎日変わるように、外国の通貨の価格も毎日変わる。1ドルが100円になったり120円になったりする。

「投資」とは、未来のために働くことだ。そして実際に多くの人の役に立ったとき、投資は成功する。
たとえばゲーム会社に100万円投資することを考えてみよう。ゲーム会社では、デザインを考えたりプログラムを書いたり、ゲーム制作に関わる多くの人たちが働いていて、新しいゲームを作ろうとしている。この100万円は働いている彼らのお給料などに使われる。新しいゲームを作るのも、将来ゲームで遊ぶ人たちのために働くことだから、投資だ。

将来、多くの人がゲームを楽しんでくれて売上が伸び、たとえば300万円が投資の配当として手に入ったとする。すると、投資した100万円が300万円になったのだから、差し引き200万円もうかることになる。つまり、多くの人の役に立ったから、もうけることができるのだ。
だけど、そのゲームがつまらなくてだれも買ってくれなければ、だれの役にも立たない。ゲームを作った労力はムダになるし、100万円損することになる。

つまり、将来の多くの人の幸せを予想して働くことが、「投資」なのだ。

「うーん、わかったような、わからないような、、、」
「今はまだわらなくても、だいじょうぶ。投資部で活動していけば、わかっていくわ」
「この板を切っているのも、未来のために働いているってことですね。なんだかわからないけど、おもしろそう。とりあえず、私も入部します!」


投資部に入れば、お母さんが夢中になっている"投資"の正体が分かるはず。そう思って、よく分からないまま投資部に入部したアカリちゃん。ノコギリを使う投資部でどんな活動をしていくのだろうか。

マンガ イラスト©髙堀健太/コルク







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著者紹介 田内学
書籍「お金のむこうに人がいる」(ダイヤモンド社)著者
国際大学対抗プログラミングコンテストアジア大会入賞。
2003年に東京大学大学院情報理工学系研究科修士課程修了。
以後、ゴールドマン・サックス証券株式会社に金利トレーダーとして16年間勤務。
日銀による金利指標改革にも携わる。

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