ベネッセコーポレーションは、企業が取り組むべき事業活動における環境活動はもちろん、教育を軸とする企業として、環境問題に対して考えるきっかけを提供し、子どもたちや子ども取り巻く大人たちも、社会課題の1つとして主体的な活動につなげていく場を用意する使命があると考えています。
高校生の皆さんの環境問題に対する意識や環境活動の実体験などを広く社会に発信するきっかけとなることを願い、15年前より進研ゼミ高校講座は「ベネッセ高校生環境小論文コンクール」を開催しています。その様子をご紹介します。
「高校生環境小論文コンクール」とは。始めたきっかけ
主に告知を担当する高校生商品部の大沼優花に話を聞きました。
「もともとは全社的な環境について何かしよう!という全社の取り組みの中から始まったと聞いています。高校生が環境について自ら主体的に考え、アウトプットしていくためにはどんな形がよいかを考え、小論文のコンクールという形になりました。
当初はプロジェクトの形で、興味のある人が手を挙げて進めていましたが、今ではすっかり定着し、進研ゼミ高校講座として定番の企画となりました。
毎年7月から募集を開始し、ベネッセコーポレーションで制作している高校の先生向けの情報誌VIEWで告知したり、進研ゼミ高校講座のサイトやアプリなどでお知らせし、最優秀賞1名、優秀賞10名程度の審査結果を12月に発表しています。
個人での参加だけでなく、学校単位の参加の方も多く、応募数は例年数百名規模です。大学入試での小論文は600~800文字がボリュームゾーンですので、先生がそのきっかけに使っていると思われます。入賞者の作品が読め、ほかの人の考えを知ることにより、刺激を受けられることを評価いただいています。」
夢で終わらせない、解決への実現を問うテーマ
募集テーマは、高校生にとってふさわしいものとを考え、当初から変更なく以下です。
「家、学校、地域などあなたの身の回りで、地球や生物に負荷をかけていると思う問題を挙げ、○○の立場から、その問題の解決策を800字以内で提案しなさい。その際、その解決策が有効だと思う理由も述べなさい。」
審査を担当する、同じく高校生商品部の田中万美子からも話を聞きました。
「テーマに『〇〇の立場から』としているのは、より環境に対しての考えを明確にし実現性を高めてほしいという考えからです。どういう立場からかを明らかにしないと、夢だけで現実味がないものとなってしまいます。
コンビニ店の店長、地域の商店街の人、企業の人、役所の職員...と考えてみることで、どういう人なら解決できるか、より現実味をおび、身近にひきつけて考えることができるからです。」
審査へのこだわり
田中は続けます。
「こういった背景から、審査は日本の環境経済学における第一人者である細田衛士先生にお願いし、大きすぎるテーマに夢みたいなアイディアでぶつかるのではなく、誰が、いつ、どこでどのように、それにかかるコストは?など、リアリティのある提案かどうかを見ていただいています。
もちろん環境小論文コンクールは、審査では小論文して成立しているかも大きなポイントです。解決策としてアイディアがよかったとしても、小論文として成立していないものは読み手には伝わらないので、優秀賞には選ばれません。高校生には、説得力のある小論文を書く力も問いたいと思っています。
第15回の最優秀賞の大島高校の2年生のF.Hさんの小論文「ポイ捨てを減らし、ポイントを稼ぐ」は、高校教師の立場から「ポイ捨て撲滅運動会」を実施し、地区ごとのごみ拾いの成果を体育祭のポイントに加算するというユニークな提案でした。
細田先生によるご講評では、提案内容の独自性を評価いただいただけでなく、小論文としての書き方や考え方へのアドバイスをいただいています。他の優秀作品への講評も同様ですが、高校生にとっては、ここでフィードバックされことを入試や大学のレポートにも役立たせることができるのではないかと思っています。
環境について考えるきっかけだけでなく、「文章で伝える力」について考えられる点、また入試の力にもなる点が、コンクールの特徴となっているのではないでしょうか。」
審査を通して感じていること 高校生への期待
最後に高校生への思いや今後への期待を聞きました。
大沼より
「調べたことが自分にとっては新鮮な内容であるからだと思いますが、調べたことをそのままつらつら書いてしまい、自分の意見が少なくなってしまう人がいます。自分でどうできるか、何ができるかにまで落とし込んで書いてもらえるといいなと思います。最優秀賞のF.Hさんはじめ、今年受賞された皆さんは、身近なところからのアイディアで、私は逆に勉強になりました!」
田中より
「数年審査に関わっていますが、環境についての情報はネットなどでの集めやすく、たくさん溢れているので、『知っている自慢』だけの文章になるケースがあります。そしてその傾向が年々強くなっていることを感じます。大仰なアイディアでなくてもよいので、自分の身近な気づきから問題意識が生まれ、そこからの提案が増えるといいなと思っています。
『環境について考えながら、小論文の書き方の勉強になりますよ!』と高校生にカジュアルにお伝えすることで、多くの方に参加いただきたいという面はあります。しかし、その一方で、環境問題やSDGsを、一過性のもの・受験対策のときだけ使うものとして扱ってしまわないように、このコンクールがこれまで大切にしてきた方針を受け継いで審査をしていきたいとも考えています。
地に足のついた自分ごととして環境問題を考える機会として活用してもらえたらと思っています。」