教育

株式会社パーソル総合研究所

株式会社ベネッセホールディングス

学びの個人化が進み、SDGsの関心が高まる現代において「人を巻き込んでいく学び」と「社会課題への関心」が若年社会人の「幸せな活躍」に影響

ベネッセ教育総合研究所×立教大学中原淳教授×パーソル総合研究所による産学連携研究PJT 若年社会人の活躍に関する調査結果を発表

 株式会社パーソル総合研究所(本社:東京都港区、代表取締役社長:渋谷和久)と、株式会社ベネッセコーポレーション(本社:岡山県岡山市、代表取締役社長:小林 仁)の社内シンクタンクである「ベネッセ教育総合研究所」は、立教大学中原淳教授と共同で、若年社会人の学びに関する定量調査(サンプル数2000人)を実施し、結果を取りまとめましたのでお知らせします。

 ■サマリ
 今回の調査では、幸せに活躍している若年就業者の特徴として、
  1)「学びや学習に前向きにとりくんでいる」人が全体と比べて1.8倍多い
  2)人を巻き込んで学んでいく「ソーシャル・ラーニング」の学び特性を持っている
  3)社会課題への関心の高さを示す「ソーシャル・エンゲージメント」が強い
  4)今の仕事や会社の活動の社会貢献実感である「ソーシャル・レリバンス」が強い
 といったことが明らかになりました。
 本調査では、こうした傾向を受けて、若者の「学びと幸せ」に関しての提言もまとめています。(最終頁)

報告書詳細:https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/assets/hatachikara.pdf


■調査結果概要

【1】若年就業者(25歳-35歳)の学習と仕事成果の関係を調べたところ、幸せな活躍をしている就業者は、若年層全体と比べて、「学びや学習に前向きにとりくんでいる」割合が1.8倍多く、57.1%。【図表1】 
社内勉強会への参加や主催、勤務時間外の研修参加など、業務以外の学習行動も多い。【図表2】

本調査での「幸せな活躍」の定義と測定:「はたらくことを通じて、幸せを感じている」などの7項目を「個人の主観的な幸せ」として測定し、「顧客や関係者に任された役割を果たしている」「担当した業務の責任を果たしている」などの5項目を個人のジョブ・パフォーマンスとして測定した上で、全体分布の中でともに高い層を「幸せな活躍層」として定義。

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【2】学び方について分析すると、幸せな活躍への影響が最も強いのは、人を巻き込んで学ぶ「ソーシャル・ラーニング」の学びであった(性別などをコントロールした重回帰分析の結果)。
ソーシャル・ラーニングが高い層(平均以上)と低い層(平均未満)で比較すると、幸せな活躍をしている人の割合が4.0倍。【図表3】
幸せな活躍層のソーシャル・ラーニングの具体的な行動割合は、全体平均のおよそ2倍。【図表4

-ソーシャル・ラーニング以外の重要な学び特性については、報告書を参照。
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/assets/hatachikara.pdf
-年齢・性別・年収などの基本属性を統制し、かつ若年層のキャリアの志向性別に見ても、ソーシャル・ラーニングと幸せな活躍に有意にプラスの影響が見られた。

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 【3】若年層の関心・意識を分析すると、社会課題解決への意識の強さを示す「ソーシャル・エンゲージメント」の高さが、幸せな活躍にプラスの影響を与えていた。
  ソーシャル・エンゲージメントが高い層(平均以上)と低い層(平均未満)で比較すると、幸せな活躍をしている人の割合が4.5倍。【図表5】

-「自分の暮らしは様々な人のおかげで成り立っている」という感覚は46.8%と高いが、「地球全体の問題は今の世代の行動によって解決していける」といった課題解決への効力感は3割程度と低め。【図表6】
- ソーシャル・エンゲージメントは、「課題解決への効力感」「具体的課題への関心」「社会的責任感」の高さを、以下の項目で聴取。
- 年齢・性別・年収などの基本属性を統制しても、若年層の幸せな活躍に有意にプラスの影響が見られた。

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【4】「今の仕事や今の会社の活動が、社会への貢献につながっている」という感覚である「ソーシャル・レリバンス」も、幸せな活躍にプラスの影響が見られた。
  ソーシャル・レリバンスが高い層(平均以上)と低い層(平均未満)で比較すると、幸せな活躍をしている人の割合が3.2倍多い。【図表7】

- ソーシャル・レリバンスは、会社や自分の仕事による社会貢献実感、そしてその見通しについて、以下の項目で聴取。
- 年齢・性別・年収などの基本属性を統制しても、若年層の幸せな活躍に有意にプラスな影響が見られた。

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■調査概要

調査名称 パーソル総合研究所・ベネッセ教育総合研究所・中原淳「若年就業者のウェルビーイングと学びに関する定量調査」
調査内容

① 若年就業者の多様な活躍とウェルビーイング(主観的幸福感)に重要となる資質・能力・適性を明らかにする
② 活躍とウェルビーイング(主観的幸福感)のために重要となる仕事経験/大学時代の学び・経験の内容を探る

調査手法

調査会社モニターを用いたインターネット定量調査

調査時期 2021年11月5日―11月8日
調査対象者

有期雇用を除く25~35歳の就労者 2000名
※全国、大卒・院卒 ※業種・職種は不問
25~29歳男性25.1% / 30~35歳男性35.1%
25~29歳女性17.9% / 30~35歳女性21.3%
性別不明0.8%

実施主体 パーソル総合研究所・ベネッセ教育総合研究所・中原淳(ハタチからの「学びと幸せ」探究ラボ)


■報告書の詳細は以下のURLよりご参照ください。
    https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/assets/hatachikara.pdf

提言

 今回の調査で、幸せに活躍している若者は、社会人になっても主体的な学びの意欲が高いこと、また、積極的に人を巻き込みながら学ぶという「ソーシャル・ラーニング」の学びの特性を持っていることが明らかになりました。
現在、大学や社会人の現場ではコロナ禍によるオンライン化に伴い、学びの個人化が進んでいます。しかし、今回の結果からは、「個」としての学びだけでなく、「人とともに学ぶ」 「周囲の人に意見を聞く」といったことを通じて、学びを社会化できる力を身につけることが若い世代の学びのポイントになりそうです。
また近年、企業経営においてSDGsやESG投資が盛んに叫ばれる中で、若い世代の社会課題への関心に注目が集まっています。今回、社会課題への関心の高さや課題解決への効力感を、「ソーシャル・エンゲージメント」という概念で測定したところ、そうした関心が強い若者ほど、幸せに活躍しているということもわかりました。
自身の利益だけを追い求めるのではなく、こうした社会課題への関心を強く持ちながら多くの人とともに学んでいくことが、これからの世代の豊かなキャリアにつながりそうです。

ベネッセ教育総合研究所・立教大学中原淳・パーソル総合研究所
ハタチからの「学びと幸せ」探究ラボ 一同


■【ハタチからの「学びと幸せ」探究ラボ】について

ベネッセ教育総合研究所・立教大学中原淳教授・パーソル総合研究所による産学連携の研究プロジェクト。未来を生きる大学生~若手社会人が、"よく生きている""はたらいて笑っている"未来をワクワクして描き、意欲を持って学びや行動へと向かうための羅針盤を届けることを目的とする。


■【株式会社パーソル総合研究所】<http://rc.persol-group.co.jp/>について

パーソル総合研究所は、パーソルグループのシンクタンク・コンサルティングファームとして、調査・研究、組織人事コンサルティング、タレントマネジメントシステム提供、人材開発・教育支援などを行っています。経営・人事の課題解決に資するよう、データに基づいた実証的な提言・ソリューションを提供し、人と組織の成長をサポートしています。


■【ベネッセ教育総合研究所】<https://berd.benesse.jp/>について

ベネッセ教育総合研究所は1980年に発足した株式会社ベネッセコーポレーションの社内シンクタンクです。子ども、保護者、学校・教員を対象に様々な調査・研究を行っています。また教育内容や方法、評価測定などについても研究開発を進めています。調査・ 研究で得られた知見は、ベネッセ教育総合研究所のWeb サイト(https://berd.benesse.jp/)にて公開し、子どもの成長・発達を取り巻く環境の改善をサポートする情報発信を行っています。


■【立教大学 経営学部 中原淳研究室】<http://www.nakahara-lab.net/>について

立教大学 経営学部 中原淳研究室は、人材開発・組織開発・リーダーシップ開発など、企業組織における「大人の学び」を研究する研究室です。パーソル総合研究所、ベネッセ教育総合研究所をはじめとする多くの企業と共同研究を実施し、社会に最新の研究知見をお届けしています。

最終更新日:2022年02月22日