BBM障がい者雇用 TAMATEBAKO ~障がい者雇用の未来をそだてるために~
BOX2 ベネッセビジネスメイトの歩み①
文責: 顧問 櫻田 満志
1982年 ベネッセコーポレーション入社
2010~2020年 ベネッセビジネスメイト代表取締役社長
2020年~ 顧問
ベネッセビジネスメイト(以下BBM)は2005年2月に特例子会社として設立され、試行錯誤を繰り返ししながら障がい者雇用を進めてきました。そして2020年に15周年を迎えましたが、設立からこれまでBBMがどのように考え、悩み、どのように変わってきたのか、その歩みを振り返っていきたいと思います。
BBMは2005年、東京都多摩市のベネッセコーポレーション本部ビルで業務をスタートし、2006年ベネッセ本社ビルに岡山事業所を開設。以降、この2つの拠点を中心に様々な業務を受託しながら成長してきました。
設立時の業務はオフィス清掃・郵便物等のデリバリーが中心でしたが、2008年に大型コピーセンターであるOAセンター、2012年にベネッセスタードーム(プラネタリウム)の運営を受託し、その後シェアードサービス業務、カフェサービスなど、少しずつ業務領域を拡大してきました。
2016年にはグループ会社の「ベネッセソシアス」(BSO)を設立し、介護施設の洗濯業務を行う障害者継続移行支援A型事業所の運営を開始し、新たな領域、新たな層の障がい者雇用にもチャレンジしています。
そして、2020年からのコロナ感染拡大の影響による業務内容の変化やこれから予測される環境変化、働き方の変化に合わせて新たなステップアップをめざしてチャレンジを始めています。
①「会社設立~よちよち歩き」のとき(2005~2009)
設立時からの数年間は、親会社の総務部社員が出向し、試行錯誤しながら障がい者雇用に取り組みました。
社内には障がい者雇用についてのノウハウもなく、会社としての基盤や組織体制もゼロからのスタートでした。受託業務内容については前任者に学び、組織や制度、障がい者支援のノウハウについては他の特例子会社や支援機関の方々から学びながら積み上げていきました。成功事例やノウハウを「いいとこ取り」させていただきました。「障がい者雇用」という同じ目的を持った会社や関係機関では何でも共有し、教え合い共に進化するという関係は現在も続いており、障がい者雇用の進化の大きな推進力になっていると感じます。
また、BBMには様々な背景や価値観を持った社員が働いていましたが、少しずつ会社のビジョンや方向性を決め、議論することで、みんなが同じ方向を向いていけるようになっていきました。
主な受託業務
●東京...メール室デリバリー、オフィス清掃(2005年~)、図書館、
稲城制作センター(軽印刷)、マッサージ(2006年)
OAセンター(2008年)→稲城制作センター統合
メール室・OAセンターの首都圏拠点への拡大
●岡山...メール室デリバリー、オフィス清掃(2006年~)→高柳・番町へ
OAセンター(2008年)
■障がい者17人で業務をスタート
2005年に東京事業所(多摩)では、オフィス清掃、郵便物等のデリバリーを中心に障がい者17人で業務をスタートしました。
その翌年に岡山事業所を設立、マッサージ、図書館運営業務なども受託し、2008年には親会社のコピーセンター(OAセンター)の運営を受託しました。
OAセンターは安定した業務量もあり、その後の大きな事業の柱となりました。センターの運営受託時には前委託会社のアルバイトスタッフに転籍してもらい、それから数年かけて業務や体制を見直し、障がい者の雇用拡大につなげていきました。
2009年までの5年間で売上は約3倍になり、障がい者雇用カウントは100人を超えました。
■新しい会社の風土や基盤作りもスタート
設立から数年間は業務や障がい者雇用の拡大が中心でしたが、少しずつ新しい会社の基盤も構築していきました。
2009年に社員の行動指針となる「クレド」を作り、社員全員で「会社が目指すべき姿・考え方」を共有しました。このクレドができたことで、社員が同じ方向を向いて仕事ができ、協力し合える風土ができてきました。
また、制度や組織・体制についても整備していきました。特に人事制度については親会社の制度をもとにしており、現在でも大幅な変更なく運用できています。
支援体制としては、各部門に指導員を配置するとともに「定着推進課」を設置し、各部門のサポートや障がい者・支援者の研修・支援機関との連携対応などを行っています。この部署は障がい者の支援体制の核となっており、BBMの障がい者支援のノウハウ・スキルの大きな底上げにも貢献しています。
主な基盤構築など
・企業理念、ビジョン、めざすべき姿の共有
事業計画等での明文化、ホームページ、会社概要掲載
・障がい者支援体制の整備
指導員の確保・・・前任のスタッフを雇用して品質維持、経験者採用
支援スキルの強化、支援機関との連携による支援体制整備
定着推進課の設置・・・定着支援のサポート、企画立案・推進
・人事制度の構築
一般職・サービス職の等級制度(後に一本化)、
目標設定シート・評価制度等(相対評価、水平会議など)構築
・クレドの制定(2009年検討、2010年施行)
社員の行動指針として明文化。毎年「クレド大賞」で部門・個人を表彰。
②「少しずつひとり立ち」のとき(2010~2015)
設立時の試行錯誤から、数年が経過し、組織や体制も安定し、少しずつ新しい取り組みができるようになりました。それまでに見えてきた課題を少しずつ解決しながら、新しい業務領域にもチャレンジしていきました。
2010年頃からは毎年の事業計画の立案・予算管理にも力と時間をかけ、年度の目標ややるべきことを明確にして取り組んでいきました。
また、社員の声を聴きながら制度・組織体制の見直し、人事制度の改訂や研修の体系化も進めていきました。
BBMの行動指針「クレド」の導入をきっかけに社員旅行・慰労会などのイベントも開催し、アビリンピックやスポーツ大会などにも積極的に参加するようになりました。
この時期が「会社の一体感もアップし、事業・基盤ともに大きく成長した時期」と言えるかもしれません。
ただし、同時に「業務領域の拡大による業務の難易度アップ」、「障がい者の支援者の不足」など新たな課題も見えてきました。
■着実な仕事で信頼感アップ、業務も確実に拡大
2012年のベネッセスタードーム運営受託をきっかけに、総務サービス窓口(オフィスの中でPCや備品の貸出、問い合わせ対応)などのシェアードサービス業務や様々な親会社事業部のサポート業務を受託するようになりました。
既存業務についても領域が拡大しました。メール室のデリバリーは「フロアまで」から「個人の席まで」に変わり、オフィス清掃も拠点が増え、定期清掃の受託も進みました。OAセンターでも価格改訂を行うなど競争力アップをはかり、業務量は大きく増加しました。
そして、これらの業務に対して「依頼された仕事をしっかりやり切る」という姿勢で取り組んだことで信頼感が生まれ、また新しい仕事を頼まれるという流れができてきました。
また、業務の工程を見直してシンプルに設計し、「仕事を楽にする、楽しくする活動(=楽ジョブ)」を進め、難易度の高い業務でも障がい者が担当できるようになり、事務系業務の受託範囲も一気に拡大しました。
この時期のキャッチフレーズは「Change&Challenge」。会社全体で「変えていこう」という雰囲気が盛り上がり、その成果が出たと言えます。
5年間での会社全体の売上は1.5倍になり、障がい者雇用カウントは150人を超えました。
主な受託業務
・定期清掃の受託(2011年~)・・・外注管理の受託からスタートし、徐々に障がい者の業務として内製化
・岡山の清掃拠点拡大・・・高柳・長船拠点
・メール室デリバリー業務拡大(2013年) ・・・「フロアまで」から「個人席まで」に拡大
・ベネッセスタードーム運営業務受託(2012年)・・・他社とのコンペで受託し、業務のサービスアップ、効率化を実現。この業務受託をきっかけに事務系業務の依頼が増加。
・シェアードサービス業務受託(2014年~)・・・総務サービス窓口、図書館運営業務など
・ベネッセグループ障がい者雇用支援業務受託(2012年)・・・事務局、グループ会社の障がい者雇用サポート業務を受託
■ベネッセグループ全体の障がい者雇用を推進する会社へ
ベネッセグループでは、2012年に策定した「ベネッセグループ障がい者雇用方針」において、「障がい者雇用は特例子会社だけでなく、グループ各社でそれぞれの責任において進めていくこと」を宣言しました。その中でBBMの位置付けも「ベネッセグループ障がい者雇用推進の事務局」および「グループ各社の障がい者雇用のサポート」部門として明確に示され、社内に「グループ雇用推進室」(現在の「グループ雇用推進本部」)を設置しました。
ベネッセグループ障がい者雇用方針(2012年作成)
◆ベネッセグループ全体で積極的に障がい者の雇用を進め、コンプライアンス(法定雇用率のクリア)を高いレベルで実現し続ける。
◆ベネッセグループにおいて多様な人材を受け入れられる風土、障がい者雇用もあたりまえになっている状態を目指す。
■会社の方向性、目指す姿を共有し、クレドを導入
2009年に社員のプロジェクトでBBMの行動指針である「クレド」を作成し、翌年全社で共有しました。
クレドカードを社員全員が携帯し、朝会でクレドを手話をしながら唱和するなどの取り組みが始まり、現在も続いています。社員旅行・家族見学会などのイベントも積極的に行いました。また、部門や個人を表彰する「クレド大賞」を設置し、毎年表彰を行っています。
これらの取り組みを通して、「一緒に働く社員を大切にする」という意識や日々の仕事において「お客様にありがとうと言われる仕事をしよう」という意識が高まり、モチベーションや品質にもいい影響が出てきました。
2010年ごろから「ベネッセビジネスメイトはどんな会社になりたいか」をリーダーを中心に何度も議論しました。そして、「市場競争力のある会社、ベネッセグループにとってなくてはならない会社にしていく」というビジョンを掲げ、障がい者中心の会社であっても業務の品質や価格で他の会社に負けない会社、お客様にとって信頼できる会社になろうと決意しました。
このビジョンは毎年事業計画の最初に掲載し、社員全員で共有するようにしています。
■働きやすい会社、なくてはならない会社をめざして
2012年に社員の育成方針「人事ポリシー」を明確にした上でモチベーションの上がる人事制度を目指し、等級、評価、報酬すべての面から見直しを行いました。
同時に人材育成・研修にも力を入れ、知的障がいメンバー向けのビジネスマナー研修、指導員・管理職向けのスキルアップ研修など時期や対象者、内容別に研修体系を作り、毎年アップデートしてきました。
このように基盤整備にも力を入れながら、働きやすい会社をめざしてきました。そして、2013年頃から会社見学や外部の講演会での発信など、私たちの取り組みを外部の方に知ってもらう機会も増えました。私たちの取り組みが他社の障がい者雇用の役に立つことができると同時に、逆に意見をもらうことで自らの成長にもつながりました。
2015年には10周年を迎え、記念冊子の作成とともに記念式典・パーティも行い、一つの節目となりました。BBMのロゴ・キャッチフレーズ、新規事業提案の公募も行いました。現在使っているロゴ、キャッチフレーズはこのときに最優秀賞を獲得したものをもとにしています。
また、この時から永年勤続表彰(10年目表彰)を開始し、長く働く社員の目標の一つにもなっています。2020年からは15年目表彰も行っています。
主な基盤構築など
●人事制度の改訂、処遇改善・・・育つ・やる気の出る制度へ
・人事ポリシーを作成し、育成の考え方をもとに人事制度を改訂
・等級制度を一本化、報酬制度・評価制度も見直しを実施
●組織変革・・・障がい者メンバーのキャプテン制(業務リーダー)導入、
指導員の障がい者支援と業務指導の役割分化など
●定着施策、研修体系の整備
・当事者向け研修の整備・・・障がい者向けコミュニケーション研修、セルフケア研修など
・指導員・管理者向け研修の強化、支援機関との連携強化
●風土・一体感醸成への取り組み
・アビリンピック・障がい者ワークフェア、職業リハビリテーション学会研究・実践発表大会に毎年参加
・スポーツ大会などにも積極的に参加。社員旅行、慰労会、家族見学会などを定期的に実施
・BBMブルゾン、Tシャツ、帽子などを制作し、イベントで活用 ※ビームスのデザインのエプロンも製作
●執筆・記事掲載、認証など
・2013年 「月間障害児教育」、「精神障害者と働く」、「月刊発達障害」、「教育時報(岡山県)」などに執筆
WEBサーナ、FVP企業訪問などWeb記事にも掲載
・2013年 精神障害者等雇用優良事業所認定
※2014年度は精神障害者等雇用優良事業所認定委員会の委員として参加

